2016 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of probiotics on diarrhea focusing on aquaporin in the colon
Project/Area Number |
16H07253
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
今 理紗子 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 特任助教 (90779943)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | プロバイオティクス / アクアポリン / 腸内細菌 / バイオマーカー / 下痢 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの腸内には多種多様な細菌が存在し、腸内細菌叢を構成している。近年、腸内細菌叢はヒトの生理機能と密接に関与していることが明らかになりつつあり、腸内細菌叢の恒常性を維持することはヒトの健康を維持する上で、非常に重要であるものと考えられている。腸内細菌の一部の菌は、ヒトに有益な作用をもたらすことが知られており、現在、プロバイオティクスとして医薬品や嗜好品が多く使用されている。しかしながら、プロバイオティクスの作用メカニズムに関する基礎研究は十分に行われていないため、プロバイオティクスの効果の違いや使用法については明確に区別されていない。そこで申請者は、プロバイオティクスの有効性や特徴を示すバイオマーカーを立案し、その作用メカニズムを科学的に検証することにより、菌種の異なるプロバイオティクスの選択や使用法について、医療従事者や消費者に対して有用な知見を提供できるのではないかと考えた。検討に際しては、腸内細菌叢の変動が下痢や便秘を伴うことに着目し、腸内細菌が最も多く存在する大腸の水チャネル「アクアポリン」について解析を行った。その結果、抗生物質シプロフロキサシンをラットに経口投与すると、糞中水分量が増加するとともに大腸AQP3の発現量が低下することがわかった。この現象は投与1日目から生じ、投与期間中は持続していた。さらに、in vitro試験においてシプロフロキサシンが直接AQP3を低下させる可能性は低いこと、in vivo試験においてシプロフロキサシン投与時には腸内細菌量が著明に低下していたことから、シプロフロキサシンによる大腸AQP3の変化は腸内細菌量の低下に起因している可能性が示唆された。本研究の結果から、腸内細菌は大腸AQP3の発現量を制御する可能性が示唆され、プロバイオティクスの特徴を説明する上で、大腸AQP3の発現や機能がバイオマーカーになり得るものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AQPの発現をマーカーとして、プロバイオティクスの有効性や特徴を解析するに先立ち、まず、腸内細菌叢の変動に伴う下痢症モデルを作製し、下痢の発症において大腸AQPsがどのように関与しているのかについて調べた。具体的には、抗菌スペクトルの異なる抗生物質シプロフロキサシン、バンコマイシン、クラリスロマイシンを6日間経口投与した。その結果、抗生物質の投与によって糞中水分量が増加し、このとき大腸のAQP3の発現量が著明に低下することがわかった。このとき、抗生物質の種類によって糞中水分量および大腸AQPsの変化に差異が認められた。最も変化が著しかったシプロフロキサシン投与群を用いて以後解析したところ、糞中水分量およびAQPsの変化は、シプロフロキサシン投与1日目から生じ、投与期間中は持続していることがわかった。さらに、シプロフロキサシン投与時の腸内細菌量を解析したところ、シプロフロキサシン投与1日目からビフィズス菌量などが著明に低下し、総細菌量も著しく低下していることがわかった。なお、シプロフロキサシンが直接AQPsを変動させる可能性はin vitro試験によって否定された。以上の結果から、大腸AQPsの発現は腸内細菌によって変動する可能性が明らかとなり、プロバイオティクスの特徴についても大腸AQPsと関連している可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度とは異なる抗菌スペクトルの抗生物質を用いて同様の試験を行う。具体的には、アンピシリン、セフジニル、カナマイシン、アジスロマイシンをラットに6日間経口投与し、抗生物質関連下痢症を発症させる。これらラットの糞中水分量および大腸のAQPsの発現量を解析するとともに、腸内細菌叢の変化を次世代シークエンサーにより解析する。また、DNAマイクロアレイにより抗生物質関連下痢症の発症関連遺伝子を同定する。本研究結果と、昨年度行ったシプロフロキサシン、クラリスロマイシン、バンコマイシンの結果を照合し、下痢の発症およびAQPsの発現に強く影響する腸内細菌およびその発現制御遺伝子を同定する。以降、in vitro試験によりAQPsの発現制御メカニズムの解析を行う。
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