2016 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半フランスにおけるアメリカ論の展開 - 比較政治思想の観点から
Project/Area Number |
16H07257
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
永見 瑞木 立教大学, 法学部, 助教 (10780629)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 政治思想 / 18世紀 / フランス / 米仏関係 / コンドルセ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀後半のフランスにおいて同時代のアメリカがいかに論じられたか、比較政治思想史の観点から研究を行うことを目的としている。 本年度は、思想家コンドルセの1780年代のアメリカ論の分析を中心に進めた。コンドルセは同時代アメリカの知識人と親交をもち、当時のフランスにおける親米派を代表する人物の一人だが、それでも彼の議論は単純なアメリカ賛美などではなく、アメリカの連邦国家建設については批判的な視線も向けており、その理由や背景を探ることは、当時のフランスにおけるアメリカに対する両義的な視点を明らかにする点で非常に重要だからである。またこの問題は、王政末期のフランスの改革構想とも連動していることを常に意識することも重要となる。 作業としては、1.コンドルセの議論の背景となる文脈や議論の空間を整理し、再構成すること、2.コンドルセとは異なる視点からのアメリカ論について比較検討すること、の二つを軸に据えた。具体的には、1に関しては、テュルゴやマッツェとの関係を整理し、さらにコンドルセがデュポン・ド・ヌムールらと共に残しているジョン・スティーヴンスなる同時代アメリカ人の文書、アメリカ連邦憲法の注釈の分析にも着手した。2に関しては、マブリのアメリカ論を分析した。 本年度後半の1月2月にかけては各種研究会においてコンドルセに関するこれまでの研究を報告する機会に恵まれ、コンドルセのアメリカ論についても同時代アメリカの研究者から貴重な示唆を与えられ、今後研究を進展させるにあたっての新たな視点を得るなど収穫を得られた。また3月にはフランスに滞在し、国立図書館において関連文献、資料の収集を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、資料の収集や情報の整理などに追われ、議論の大きな枠組みは掴めたものの、それぞれのテキストの精査、比較検討という点では、まだ不十分な段階にあるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きコンドルセのアメリカ論を中心に据えて、今後は資料の分析と比較検討、考察に重点をおいて、研究を進めていきたい。その際「研究実績の概要」でも触れたが、アメリカ連邦憲法制定期の論争状況、とりわけ反連邦憲法派(アンチ・フェデラリスト)の議論などを参照することも視野にいれていく。コンドルセの視点に近い部分があり、おそらくコンドルセもなんらかの形でこうした議論に間接的に触れていた可能性が考えられるからである。 なお、9月には政治学会においてこれまでの研究の中間報告を行う予定である。
|