2016 Fiscal Year Annual Research Report
意見文産出における理由想定メカニズムの解明と意見文産出指導への展開
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16H07261
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小野田 亮介 立教大学, 大学教育開発・支援センター, 学術調査員 (50780136)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 意見文産出 / 理由産出 / マイサイドバイアス / 反論想定 / 文章産出 / 文章評価 / 認知バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,意見文産出における多面的な理由想定の支援方法について明らかにすることである。本年度は,第一に,意見文産出における理由想定に影響を及ぼす要因について明らかにするため,中学生を対象とした理由想定課題を実施した。理由想定課題は,意見文の一部に空白部分を設け,その空白に入る理由として想定可能なものをできるだけ多く記述する内容とした。また,理由の想定方法として「対比的な想定」や,「因果的な想定」などの条件を設け,理由想定の量的・質的特徴に理由の想定方法が与える影響を検討した。さらに,理由想定に影響を及ぼしうる個人差要因(e.g., 読書量,批判的思考態度)も同時に測定し,理由想定に影響を与える要因についてより詳細に検討することを試みた。 第二には,多面的な理由想定を促す支援方法を考案するために,特に反論想定に焦点を当てた調査を行った。マイサイドバイアスが生起することにより,意見文産出時の理由想定では自分に有利な賛成論に比べ,自分に不利な反論の想定に消極的になる傾向が確認される。したがって,多面的な理由想定を実現するためには,賛成論だけでなく,想定が困難化しやすい反論の想定を促すことが重要な支援となる。こうした問題意識のもと,代表者はこれまでに特定の役割(例:客観的な立場の新聞記者)を付与することが反論を含む多面的な理由想定を促すことを明らかにしてきた。そこで本年度は,役割付与が理由想定に影響を及ぼすメカニズムについて明らかにするため,理由の評価に着目し,20代から50代の600名を対象とし,読み手に役割(新聞記事の編集者)を与えることが理由の評価に与える影響を検討した。意見文産出において,学習者は自分が良い理由だと評価する理由を産出すると考えられるため,理由の評価に着目した検討を行うことで,反論想定の支援方法について考えるための基礎的知見を得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,意見文産出時の理由想定に影響を及ぼす要因を検討するための理由想定課題,および,役割付与が反論の評価に及ぼす影響を検討するための調査を実行することができた。さらに,意見文産出における理由想定課題を実施していただく実験協力校とも十分に協議を重ね,次の課題の内容や実施の時期について具体的な話し合いを進めている。以上のことから,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,本年度に収集したデータの分析を進め,研究知見をまとめていく。その結果をふまえ,意見文産出における多面的な理由想定を促す支援方法について考案し,実際の国語の授業を対象とした授業内実験を行うことで,その効果検証を行う。
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