2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H07268
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柏崎 諒 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 助手 (10779078)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 狩野派 / 御抱え絵師 / 表絵師 / 江戸狩野派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は狩野元俊の画風変遷について検討すべく、肖像画の作品調査を中心に研究を進めた。主なものとしては山梨県・本遠寺において狩野元信筆と言われる「日重・日乾・日遠上人像」など計6点、京都府・隣華院において「脇坂安元像」、兵庫県・たつの市立龍野歴史文化資料館において「脇坂安元像」、「孔聖像」の調査を行った。「日重・日乾・日遠上人像」については調査により「日遠上人像」のみが元俊筆であり、他2点は日遠上人像より先に制作されたものであることを確認できた。 元俊は田中敏雄氏のより、日蓮宗寺院関係の現存作例の多さから日蓮宗との関係が深いことや脇坂安元と交遊があったことが以前より言及されてきた。また、報告者は「狩野元俊の画業と日蓮宗」(『法華學報』24号、2015)において元俊が日蓮宗の中でも京都・本圀寺を中心とした六条門流との関係が色濃くみられることについて論じている。2016年度の調査を通して元俊の画風変遷について一定の結論を得ることは出来なかったが、本遠寺における作品調査によって元俊と日蓮宗の関係において新たな面を見出すことができた。元俊には本遠寺開基の養珠院となんらかの関係があったことが窺える。というのも養珠院の孫にあたる徳川光圀が本圀寺において生母の追善供養を行っており、本圀寺は狩野元俊が母を追善供養するために制作された「涅槃図」を所蔵する。「日遠上人像」は元俊の画業の中では初期の作品であり、養珠院との関係を端緒として六条門流との関係が構築されたことが推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度は元俊の作品調査を中心に研究を進め、成果を発表することを主な目標としていた。研究の進展等は大方計画通りに進展しており、本研究により一定の結論を得ることは出来た。しかし、成果の発表が未だ行えていない。これは調査先の事情や報告者のその他の業務のため、当初の予定より調査日程が遅れていしまったため、研究計画が全体的に遅延したことが原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究成果を発表できていないが、その他の事象については大方計画通りに進展している。そのため、当初の計画に加えて元俊の作品調査で得られた成果の発表を行う予定である。元俊の成果発表については、先に述べた元俊と日蓮宗との関係の他、脇坂安元との関係についても、作品調査を踏まえ検討を行う。
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