2016 Fiscal Year Annual Research Report
流布本『保元物語』『平治物語』の成立と16世紀の文学の関連
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16H07270
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
滝澤 みか 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (20778683)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 流布本 / 保元物語 / 平治物語 / 軍記物語 / 教訓書 / 16世紀 / 室町 / 戦国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『保元物語』『平治物語』の最終的な改作である「流布本」の成立が、16世紀の動乱期における「教訓書」の隆盛と関わることを解明し、その成立の意義を明らかにすることを目的としている。 第一段階の計画として挙げていた、流布本『保元物語』『平治物語』の善本候補の写本を調査した。具体的には、『保元物語』は大東急記念文庫本・名古屋市蓬左文庫本・東京国立博物館本、『平治物語』は宮内庁書陵部本・陽明文庫本・蓬左文庫本・福島県三春町歴史民俗資料館本・仁和寺本の原本調査を行うことが出来た。この作業と並行し、流布本の内部の記述についても分析を進め、成果を論文としてまとめ、投稿を行った。また、口頭発表も予定している。さらに、流布本と京図本(京都大学附属図書館本)系統の両物語の比較作業も、京図本系統の写本の原本調査を交えつつ進めることが出来た。 第二段階の計画として挙げていた教訓書系統の各作品調査は、予定通り初年度・次年度を通して実施しており、現在も原本調査や複写物の収集等を進めている最中である。従来の調査ではさほど注目されていない写本の情報についても、新たな知見を得ることが出来ており、今後も分析を進めていく。 以上の研究成果のまとめとして、掲載が確定しているものは「流布本『保元物語』『平治物語』における乱の認識と物語の改作」(「中世文学62」2017発行予定)がある。本研究の軸となる、流布本両物語と教訓書との関連性について触れて論じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた原本調査が順調に行えたため。特に教訓書に関しては今後進展しうる可能性のある調査結果を得られたことが大きい。また、流布本両物語と教訓書の関連性に触れた論文も投稿出来たため、それを基盤に今後も研究を進めていくことが可能と考え、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度から実施している各作品の原本調査を継続して行っていく。初年度の調査結果により、当初予定していなかった資料を調査する必要が出てきたが、調査予定先と所蔵先が同じため、予算内で調査を行うことが可能である。 初年度の調査先は自身での資料撮影が可能な場所も多かったことなどから予算に多少ずれが生じたが、その分、撮影や複写が不可能な所蔵機関の影印本などを購入することが出来、調整が出来た。また、そうした複写物等の入手が困難な調査先については、重ねて調査を行うことで、対象作品の分析を深めたいと考えている。
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Research Products
(2 results)