2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規顧客の獲得と既存顧客の喪失が企業のリスクテイキングに与える影響
Project/Area Number |
16H07282
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐々木 博之 早稲田大学, 商学学術院総合研究所, 助手 (70779165)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 経営学 / 企業の行動理論 / アスピレーション・レベル / パフォーマンス・フィードバック / 生命保険会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)<セミナー発表・招待> 佐々木博之(2017)「保有契約高と新契約高のアスピレーション未達が生命保険会社の資産運用でのリスクテイキングに与える影響―企業の行動理論からのアプローチ―」 平成29年4月保険学セミナー東京, 生命保険文化センター. (2)<学会発表・審査有> 佐々木博之(2017)「市場開拓と市場保持のアスピレーションが人的資源配分に与える影響~企業の行動理論からの統計的分析~」 2017年度組織学会研究発表大会, 滋賀大学彦根キャンパス. (3)<学会発表・審査有> Sasaki, H.(2017)CURRENT WEALTH, GAIN AND LOSS: ORGANIZATIONAL RISK-TAKING AFTER MIXED GAMBLES. 10th Asia Academy of Management, Kitakyushu City, Fukuoka, Japan. (4)<ドクトラル・コンソーシアム・審査あり> Sasaki, H.(2017)THE IMPACT OF MARKET EXPANSION AND RETENTION ASPIRATIONS ON HUMAN RESOURCE ALLOCATION: A BEHAVIORAL PERSPECTIVE (with Junichi, Y, Waseda University). 10th Asia Academy of Management Doctoral Consortium, Kitakyushu City, Fukuoka, Japan.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規顧客からの業績と既存顧客からの業績が経営者のリスク行動にどのような影響を与えるかを既存研究サーベイによる仮説構築と日本のすべての生命保険会社に関するパネルデータの定量分析により明らかにする。既存研究では、前年の企業業績が期待水準を下回ると経営者は研究開発や工場の規模拡張などのリスク行動を過剰にとることが明らかになっている。しかし、既存研究が対象としている企業業績はROAやROE、市場シェアなどの最終的な全社的指標であり、新規顧客/既存顧客別の売上高など、企業の経営者がサブゴールとするような業績がリスク行動に与える影響はわかってない。 本研究では、「インシュアランス 生命保険統計号」に掲載されている1996年から2015年までの財務データを外部業者に委託して電子データ化し、統計ソフトウェアであるStataを用いて回帰分析を行った。研究の結果、新規顧客の業績が歴史的アスピレーション・レベルに対して増えるほど、経営者は事業機会を見出してリスクテイキングを行う一方、既存顧客の業績が歴史的アスピレーションに対して減るほど、その問題を解決するためにリスクテイキングを行うことがわかった。また、新規と既存の両方において、業績がアスピレーションを超えると、上記の関係性が強まることがわかった。 本研究成果は、保険論の研究者が集う保険学セミナー(東京・4月)で報告済みであり、ファイナンスや生命保険学者、生命保険実務家の視点からフィードバックを頂いた。国内の主要経営学会である組織学会研究発表大会(滋賀・6月)および、国際経営学会であるAsia Academy of Management年次大会(北九州・6月)で報告予定であり、日本経営学会第91回大会(岡山・8,9月)での報告を申請中である。また、論文の初稿は近日完成予定であり、国際主要ジャーナルに2017年中に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度末時点で、すでに仮説構築からデータ収集、分析まで実施し、論文の初稿が完成している。従い、平成29年度では、学会での報告や研究者間のフレンドリーレビューを実施し、必要に応じた追加的調査・分析を行うことが主たる取り組みである。 平成29年度上半期は、国内の主要経営学会である組織学会研究発表大会(6月・彦根・採択済み)および日本経営学会第91回大会(岡山・8,9月・申請中)、国際経営学会であるAsia Academy of Management年次大会(北九州・6月・採択済み)で研究報告を行う予定である。国内学会では日本人を中心とした優れた研究者・実務家からのフィードバックが期待でき、Asia Academy of Managementでは香港や台湾などのアジア系の研究者や欧米の研究者からのフィードバックが期待できる。特に本研究は、グローバルな経営学の文脈での理論的貢献を第一にしているため、研究を発展させるための絶好の機会と捉えている。現時点で予定している追加のデータ収集として、サンプル企業のトップ・マネジメント・チームのデータ収集がある。これらはコントロール変数として重要であるにも関わらず、当初はCEOなど部分的な情報しか入手できないと考えていた。しかしながら、有用なデータ源(日本金融名鑑)があることが判明し、これを収集することにした。膨大なデータ量であるため、外部委託を検討しており、今年度の予算の大部分はこれに充てる予定である。 平成29年度下半期は学会報告でのフィードバックを踏まえて原稿を改善し、Academy of Management Journalなどの査読付き主要国際誌への投稿を予定している。
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