2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Zongjing lu in Chinese and Japanese Buddhism: The path to recognition and acceptance
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16H07336
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
柳 幹康 花園大学, 文学部, 講師 (10779284)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 中国仏教 / 日本仏教 / 『宗鏡録』 / 撮要本 / 鎌倉・室町期の禅 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(二年目)にあたる平成29年度は、前年度に引き続き資料の収集を行うとともに、日本における受容状況について調査を行った。その結果は以下の通り。 1、奝然が将来した釈迦立像の納入品線刻鏡に対し分析を加えた。奝然は平安中期の僧であり、入宋して釈迦立像を日本に将来した。その像には線刻鏡(菩薩の像を刻んだ鏡)が二枚納入されており、うち一枚は清聳(『宗鏡録』の編者延寿の法系上のおじ)が収めたものである。これに奝然造像の状況を併せ考えれば、線刻鏡が延寿の提示する「宗鏡」(根本の鏡)を象徴する可能性が高いことを論じた。 2、愚中周及の『宗鏡録』受容について解明した。愚中周及は南北朝期の禅僧であり、『宗鏡録』の撮要本『稟明抄』を編んだ。その全体の構成に鑑みて『宗鏡録』は、冒頭に掲げられる空と、巻末に示される心を結びつける役割――『稟明抄』1巻にひとつのまとまりを与える重要な働き――を有していることを指摘した。 3、中国・日本における『宗鏡録』受容の差異とその背景について分析を加えた。中国において『宗鏡録』は宋代以降諸宗融合の道を辿る中国仏教にその理論的根拠を提供しつづけ、それにともない『宗鏡録』に対する評価が急速に高まっていったのに対し、日本では伝来当初禅僧を中心に珍重されたにも関わらず、やがて人々の記憶から薄れていった。その要因の一つとして考えられるのが中日両国における王権の有り様の差異である。中国では宋代以降強力な王権が確立して諸宗融合の後ろ盾となったのに対し、日本ではそのような王権が成立せず、諸宗は分立の道を辿った。そのため日本では「諸宗統合の書『宗鏡録』」は忘れられてしまったのだと考えられる。 また以上3点のほか、『宗鏡録』の撮要本『冥枢会要』の訳注作成や各種資料の収集を進めるとともに、国内外の各種学会に参加して上述の研究内容に関する研究発表・意見交換をした。
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(8 results)