2016 Fiscal Year Annual Research Report
居住文化対応型の部分断熱改修におけるヒートショックの改善方策
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16H07339
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
土井 脩史 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (70779082)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 建築計画 / 建築環境工学 / 断熱改修 / ヒートショック / 伝統的木造住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、温暖地域の伝統的木造住宅の温熱環境を改善する手法として「部分断熱改修」の可能性に着目した上で、部分断熱改修の最大の課題である「ヒートショック」の改善方策を検討するものである。具体的には、1.部分断熱改修によるヒートショックの発生実態を把握すること、2.温熱環境の改善・住み方の工夫という2つのアプローチから有効なヒートショックの改善方策を明らかにすることを目的としている。 平成28年度は、主として「1. 部分断熱改修によるヒートショックの発生実態の把握」に取り組んだ。部分断熱改修を実施した京町家と実施していない京町家2件を対象として、冬期の住み方調査・温熱環境実測を実施した。部分断熱改修を実施している京町家の方が主要居室の温熱環境が良好であるものの、暖房室内外の温度差が大きくなっていること、トイレや脱衣所の温度が10℃を下回っており、ヒートショックの発生する可能性が高いことなどを明らかにした。 さらに、部分断熱改修を実施した京町家を対象として、暖房室内外を往復してもらう被験者実験を実施した。移動時における被験者の血圧や心拍等の生理量、温冷感や快適感などの心理量の変化を調査した。その結果、空気温度だけではなく、生理量・心理量の変化には壁表面からの冷放射や着衣量も影響していることが確認された。また、被験者実験では、トイレや脱衣所における補助暖房の有無による比較を行い、経路空間の空気温度が低くても、トイレや脱衣所の温熱環境の改善によって生理量・心理量の結果が改善しうることを明らかにした。 その他にも、部分断熱改修と同じ入れ子型空間構造を持つ新築住宅(平成の京町家)の設計者ヒアリング調査を実施し、部分断熱改修の設計において参考となる知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は「研究目的(1)部分断熱改修によるヒートショックの発生実態の把握」を予定しており、該当する京町家の冬期における住み方調査・温熱環境調査、及び、部分断熱改修を実施した京町家における被験者実験を実施することができた。これらの実験結果については、より精緻な分析を引き続き行っていく必要があるものの、概ね計画通りに研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実験結果から、着衣量が変化せざるを得ないトイレや脱衣所におけるヒートショック対策が必要であることが確認できた。平成29年度は、トイレと脱衣所に対象を限定してヒートショックの改善方策を検討する予定である。住み方の工夫という点については、移動経路、移動時の着衣量、暖房空間の温度によってヒートショック緩和の可能性があるかどうかを検討していく。また、建物の温熱環境という点については、空気温度だけではなく壁表面からの放射も被験者の生理量・心理量に影響していることが把握できたため、トイレ・脱衣所のみの部分断熱改修の可能性を検討する予定である。対象京町家において、仮設的な部分断熱改修を実施し、再度被験者実験を実施することで、ヒートショックの改善方策としての有効性を検証することとしている。
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Research Products
(4 results)