2016 Fiscal Year Annual Research Report
キノン誘導体を用いたフェノールクロスカップリング体合成法の開発
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16H07340
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上田中 徹 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (70783794)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェノールクロスカップリング体は多くの医薬品や生物活性天然物、機能性材料等に見られる骨格であり、その合成法の開発は重要な研究課題として注目されている。世界中の様々なグループによって合成法が報告されているが、短工程かつ確実性の高い手法は発展途上の分野である。申請者はこれまでキノンモノアセタール(QMA)に対して炭素求核種を導入する反応について研究しており、高度に酸素化されたビアリールやターフェニル、オリゴアレーン類など種々の骨格の構築に成功している。しかし、本法で用いることのできる求核種はフェニルエーテル類がほとんどであり、無保護のフェノール類の導入はあまり検討されていなかった。このような背景下、QMAに対するフェノール類の導入によるフェノールクロスカップリング体の効率的合成法の開発、およびその応用展開を目的として本研究を行う。QMAとフェノール類の反応としては、平成28年初めにKurtiらによって[3,3]シグマトロピー転位による手法が報告されている。本研究では、Kurtiらの手法と汎用性や反応機構などを比較し、申請者らの手法の優位性を見出すことも目的としている。 平成28年度は、QMAへのフェノール類の導入法の開発を行った。反応の溶媒や温度、触媒などを検討した結果、非常に温和な条件で反応が進行し、良好な収率で生成物が得られることを見出した。また、Kurtiらの手法とは異なり求核置換型の機構で進行するため幅広い基質に適用可能であることも見出した。本反応は幅広い基質に対して用いることができ、多官能基化されたフェノールクロスカップリング体が短工程で合成可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に掲げた目標について、問題なく達成できている。 また、学会や論文で報告しており、研究成果の公表についても順調に行なえている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はQMAへのフェノール類の導入によるフェノールクロスカップリング体合成法の開発に成功した。平成29年度は、本反応の応用展開としてフェノール三量体や、さらに高次に重合したオリゴフェノール類の合成を行う。また、フェノール同士が結合した骨格は生物活性天然物や医薬品などの有用物質に多く見られる骨格であるため、本反応を利用してそれらの効率的な合成法を確立したい。
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