2016 Fiscal Year Annual Research Report
全能性幹細胞の維持・分化において遺伝子発現量調節を担う協同的なPIWIの機能解析
Project/Area Number |
16H07342
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
鹿島 誠 龍谷大学, 食と農の総合研究所, 博士研究員 (10780562)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | プラナリア / 幹細胞 / PIWI / piRNA / 免疫沈降 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
プラナリアは成体でも全能性幹細胞(新生細胞)を維持・制御する能力を有している。そのため、新生細胞の分子制御機構の解明は、幹細胞研究全体の前進に寄与する可能性を秘めている。本研究で注目するPIWIファミリータンパク質は、多くの無脊椎動物の全・多能性幹細胞でその重要性が報告されているタンパク質であり、プラナリアでは核に局在するPiwiBと新生細胞特異的なRNA-タンパク質複合体(クロマトイド小体)に局在するPiwiCが、特に新生細胞の維持や分化に重要であることが知られている。本研究では、これら二種類のPIWIタンパク質がどのような役割を担い幹細胞システムの制御に寄与しているのかの理解を目指す。そのために、①「PiwiB結合piRNA産生へのPiwiCの関与を明らかにし」、②「PiwiC依存的および非依存的な制御を受けるPiwiB標的遺伝子を同定する」。そして、全能性幹細胞の維持・分化において遺伝子発現量調節を担う二種類のPIWIによる協同的な機能とその意義の理解を目指す。 本年度は、主に、実験環境の準備を行った。具体的には、組織染色実験の環境構築、分子実験の環境構築、タンパク質泳動実験の環境構築、抗PiwiB抗体の作成、抗PiwiC抗体の作成を行った。各実験系が正常に機能することは予備実験で確認が取れており、次年度以降研究環境の基礎を構築することができたといえる。自作抗体については、免疫沈降を実際に行い、抗PiwiB抗体でPiwiB-piRNA複合体が沈降してくることを確認することができた。 また、PiwiBやPiwiCが標的とする遺伝子を同定するために、piwiB(RNAi)個体とpiwiC(RNAi)個体の継時的なRNA-seqを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗PiwiC抗体あるいはY-12抗体を用いた免疫沈降でPiwiC-piRNA複合体を取得することができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
PiwiC-piRNA複合体免疫沈降によってPiwiC結合piRNAが得られていないことを鑑みて、免疫沈降が成功したPiwiBに注目する。具体的には、PiwiB結合piRNAのシークエンスを先行研究よりも網羅的に決定するとともに、piwiC(RNAi)個体やX線照射個体でのPiwiB結合piRNAの発現量をRNA-seqによって調べることで、PiwiB結合piRNA産生におけるPiwiCの役割を明らかにしていく。また、piwiB(RNAi)個体とpiwiC(RNAi)個体の継時的なRNA-seqの結果を解析することで、PiwiB、PiwiCの標的候補遺伝子をそれぞれ同定・比較し、二種類のPIWIファミリータンパク質が共同的に抑制している遺伝子や、それぞれの特異的な標的遺伝子を同定する。さらに、in situ hybridizationによって標的遺伝子mRNAのクロマトイド小体(PiwiCが局在するプラナリア全能性幹細胞特異的な細胞小器官)上への局在を調べることで、クロマトイド小体上でPiwiCがPiwiBと共同的に担う幹細胞制御システムにおける機能を明らかにする。
|