2016 Fiscal Year Annual Research Report
尼門跡の文芸活動に関する基礎的研究―『源氏物語』享受を中心として―
Project/Area Number |
16H07346
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 恵理 大阪工業大学, 情報科学部, 講師 (70781425)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 尼門跡 / 曇華院 / なよ竹物語絵巻 / 恋路ゆかしき大将 / 近世源氏絵 / 源氏物語享受 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、尼門跡伝来作品を、制作者・書写者・享受者それぞれの視点から捉え、近世期の尼門跡寺院における文芸活動の実態を明らかにすることを目指すものである。本年度は、曇華院蔵本『なよ竹物語絵巻』の詞書筆者を特定するための情報収集と、大聖寺門跡で書写された可能性が高い『恋路ゆかしき大将』における「法輪寺」の描かれ方に関する考察を中心に行った。 曇華院蔵本『なよ竹物語絵巻』詞書筆者の特定に関しては、東京大学史料編纂所や国文学研究資料館が所蔵する作品・古記録を中心に調査し、詞書筆者と推定される人物らによる文芸活動に関する情報を収集した。また、本作品と同時代に成立した「源氏絵」を実見し、未だ明らかにされていない詞書筆者(11名中2名)を推定する手がかりを得た。さらに、近世期公家の日記類を調査し、詞書筆者らが天皇家周辺でいかなる文芸活動に関与していたかを明らかにする情報を得た。本調査結果は、次年度以降に紹介・発表する予定である。 『恋路ゆかしき大将』における「法輪寺」の描かれ方に関しては、『法輪寺縁起』を中心に情報収集を行い、作品内部と作品外部における描かれ方の変遷についてそれぞれ検討した。本年度行った考察は、本作品の成立論に深く関わる内容であり、次年度以降、『恋路ゆかしき大将』成立論を考える際の一助となるものである。 本年度は、尼門跡伝来作品を制作者の視点から捉えた考察を中心に行ったが、次年度は書写者・享受者の側にも重きを置きつつ、研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の情報収集結果は、研究計画に掲げた各テーマの結論を導き出せるものであると考えている。平成28年度の調査に基づき、各作品についての考察を継続して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
尼門跡伝来作品のうち、研究対象としている各作品についての考察を継続して行う。平成29年度は、作品の書写者・享受者それぞれの視点からの分析も加える。 曇華院門跡所蔵作品については、本年度の研究に加え、江戸時代の尼僧によって制作された漢詩集『曇華集』の注釈を行う。 『恋路ゆかしき大将』については、「女性と仏教」という観点も視野に入れつつ、書写者の書写態度と作品に描かれた内容との関連性について考察する。
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