2016 Fiscal Year Annual Research Report
中国南北朝時代における非漢族のエスニック・アイデンティティ変容
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16H07351
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
会田 大輔 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (70551844)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 南北朝時代 / 北周 / アイデンティティ / 墓誌 / 侯景 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究の目的である南北朝時代後期の非漢人のエスニックアイデンティティの変容過程を明らかにするため、以下の研究を行った。 まず、北周の武帝親政期に行われた禁衛改革について、石刻史料を用いて検討した。武帝は、親政開始後、ただちに禁衛改革を行い、『周礼』に依らない新たな禁衛官を多数設置した。なかでも侍伯・胥附・承御は、侍衛の要素を一部備えた皇帝直属の禁衛であり、北周の華北統一に大きく貢献した。武帝は彼らを通して二十四軍の禁衛化を進めたと考えられる。これらの官職は遊牧的要素が希薄であり、北周は官制面で徐々に中国化が進んでいたことが明らかとなった。この成果は「石刻史料からみた北周武帝の禁衛改革」と題して、2017年1月28日に関西大学で開催された東西学術研究所第14回研究例会非典籍出土資料研究班で報告した。現在、論文化が決定しており、2017年中に刊行される予定である。 また、北朝(東魏)から南朝(梁)に亡命し、梁で漢人を自称して帝位を簒奪した侯景に関する研究を開始した。今年度は日本・中国で刊行された侯景に関する先行研究を整理し、さらに侯景の出自・官歴について分析した。次年度に侯景の乱と梁漢革命の分析を進め、成果をまとめて報告する予定である。 そのほか、北周の皇族・将軍である宇文憲に関する検討をはじめ、次年度に成果を公表する予定である。また唐初に南朝系官僚の虞世南が撰した『帝王略論』巻二の校注と依拠史料について検討した「『帝王略論』巻二校注稿」(『明大アジア史論集』21、2017年3月)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づき、研究を進めることができた。本年度中に研究会報告を行い、次年度につながる成果をあげられた。また、新出石刻史料の刊行物や情報を入手することができ、次年度の研究基盤を構築することができた。また、金沢大学で開催された「古代東アジア世界における地方統治」ワークショップや大谷大学で開催された「遼史を読む会」研究合宿に参加し、中国史・内陸アジア史・日本古代史の若手研究者と交流し、知見を深めることができた。これらの点から、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をまとめ、順次、報告を進め、論文化して雑誌論文として公表していく。また、石刻史料の調査を進めるため、現地調査を行う。
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Research Products
(2 results)