2016 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病に伴うサルコペニアを抑制する食品由来成分の開発
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16H07361
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
田中 雅侑 大阪人間科学大学, 人間科学部, 助教 (10780497)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病 / サルコペニア / 骨格筋 / 食品 / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高血糖曝露に伴う骨格筋量の減少を抑制することを目的に、アスタキサンチンの効果と作用機序を検証している。ストレプトゾトシンの尾静脈投与による糖尿病モデル動物(ラット)を作製し、6週間にわたって飼育した。その結果、糖尿病における後肢骨格筋では筋湿重量の減少を確認した。その背景にある分子機序を探るため、ウエスタンブロッティング法にて骨格筋量減少の一因とされるアポトーシスの調節タンパク質(Bax、Bcl-2、XIAP)の発現量を、足底筋で検証した。その結果、糖尿病骨格筋ではアポトーシスを促す因子であるBaxの発現量が増加し、アポトーシスを抑制する因子であるBcl-2及びXIAPの発現量が低下しており、アポトーシスの亢進を示すことが確認された。また、ミトコンドリア機能の指標であるクエン酸合成酵素活性を足底筋で測定したところ、糖尿病骨格筋で低値を示し、ミトコンドリア機能障害を併発している結果を得た。さらに、平成29年度実施予定である研究の予備的試験として、糖尿病に伴う骨格筋量の減少に対するアスタキサンチンの予防効果について検証した。ストレプトゾトシン誘発性の糖尿病モデル動物にアスタキサンチン(100 mg/kg/day)の経口投与を6週間継続したところ、高血糖の改善効果は認められなかった。一方で、アスタキサンチンの投与により、糖尿病に伴う後肢骨格筋の湿重量の低下や筋線維横断面積の減少を軽減する効果が確認された。なお、これらの研究結果を関連学会で発表すべく、準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、予備的試験にてアスタキサンチンの骨格筋湿量減少に対する軽減効果を確認できた。一方で、糖尿病に伴って生じる骨格筋量の減少に関わる分子機序について、アポトーシスの関与を示す結果を得たが、糖尿病により骨格筋で生じる筋タンパク質分解やミトコンドリア機能障害に関する生化学的解析の実施が不十分であるため、平成28年度における研究目的に対する全体の達成度としては、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、アスタキサンチンが糖尿病に伴う骨格筋量の減少を軽減させることを予備的試験にて確認できた。平成29年度はその作用機序を詳細に明らかにするため、アポトーシスに加え、筋タンパク質分解に関わるユビキチンプロテアソーム系・カルパイン系、ミトコンドリア新生に関わる因子を検証する予定である。また、アスタキサンチンによる骨格筋量減少に対する軽減効果は高血糖の改善を介さないことが確認されたため、高血糖に伴って生じる酸化ストレスや糖化ストレスに対するアスタキサンチンの効果についても検証を進める予定である。
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