2016 Fiscal Year Annual Research Report
希土類ナノ結晶を用いた多機能アップコンバージョン光触媒の開発
Project/Area Number |
16H07375
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
川島 祥 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (60775724)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 希土類 / 光触媒 / アップコンバージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体透過性の高い近赤外光による光触媒反応を行うためのアップコンバージョン光触媒材料の開発を目指して、様々な希土類ナノ結晶を合成し、その光物性と光触媒活性の評価を行った。 希土類ナノ結晶の光触媒特性とアップコンバージョン特性を評価するために、まず様々な希土類元素(Ln)の錯体を作製し、オレイルアミンに加えて加熱することで希土類酸フッ化物(LnOF)ナノ結晶を合成した。合成したナノ結晶はXRDとTEMにより構造を評価した。 次に、水溶液中でクマリンを用いた光触媒活性の評価を行った。キセノンランプを用いて光照射を行い、一定時間ごとに溶液を採取して、溶液の組成を測定した。クマリンは光触媒反応で生成したOHラジカルと反応し、7-ヒドロキシクマリンを生成して青色発光を示す。その発光強度から生成量を算出することで光触媒能を評価した。光照射を行った結果、光照射に伴う生成物の濃度増加が観測され、光触媒反応が起きていることを観測した。これらの研究成果は国内学会にて発表を行った。 一方で、オレイルアミン中で合成したLnOFナノ結晶の表面は疎水的であり、水中での光触媒材料としては不向きであった。そのため、塩酸を用いて表面の親水処理を行った。その結果、LnOFナノ結晶は水中での分散性が大きく高まり、それとともに光触媒活性が向上するという結果が得られている。この成果を基に、希土類の種類や光物性と光触媒活性との関連を検討していく予定である。 同時に、アップコンバージョン特性を評価するために、YOFを母体として利用し、吸収体や発光体となる希土類イオン(NdやYbなど)をドープしたナノ結晶の合成を行った。吸収スペクトル測定の結果、Ndに由来した近赤外領域での吸収を観測した。これらの研究をさらに発展させてアップコンバージョン発光の検討を行い、さらにそれを用いた光触媒反応との複合化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類ナノ結晶はY, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Ybの計13種類について合成を行い、結晶構造の同定を行った。また光触媒活性の評価を行った結果、希土類の元素ごとに差が生じていることを観測している。さらなる光触媒活性の向上と要因を検討するために親水化処理も行っており、その光触媒活性の検討も順調に進んでいる。 これらの光触媒についての研究と同時に、アップコンバージョンについて検討するためにドープナノ結晶の合成を行っており、その光物性も明らかになってきている段階である。これらの研究結果の進捗状況は、研究計画申請時の計画通りであり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで行ってきた光触媒活性の評価とアップコンバージョン特性の評価を引き続き行うとともに、来年度からはこれらの複合化についても検討し、近赤外光を用いて効率的な光触媒反応を行うことが可能なアップコンバージョン光触媒材料の実現を目指す。そのために希土類のドープの種類や量、コア-シェル構造などの構造制御を検討していく予定である。
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