2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒマラヤ造山帯における初期の地殻溶融イベントとその役割の解明
Project/Area Number |
16H07376
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
今山 武志 岡山理科大学, 付置研究所, 准教授 (90551961)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ヒマラヤ造山帯 / 高温変成岩 / 圧力ー温度ー時間経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、高ヒマラヤ帯内部のせん断帯の発見により、高ヒマラヤ帯は一つの地塊ではなく、複数地塊の集合体であることが明らかになりつつある。しかし、せん断帯の上盤側に相当する高ヒマラヤ帯上部の変成作用やそのテクトニクスの実体は、あまりよく理解されていない。本研究では、東ネパールの高ヒマラヤ帯上部において、菫青石ミグマタイト、珪線石-カリ長石ミグマタイト、花崗岩質片麻岩から、漸新世初期(約3300-2500万年前)の部分溶融の証拠を新たに発見した。これらの変成岩類は、黒雲母の脱水溶融反応(黒雲母+珪線石+斜長石+石英→ザクロ石+カリ長石+メルト±菫青石)が約800℃で起こって形成された。菫青石は、この反応が6 kbarより低い圧力で起きた場合にのみ形成され、菫青石ミグマタイトからなる上部地殻では、低P/T型の高温変成作用は、約1700万年前まで続いている。 高ヒマラヤ帯上部の漸新世初期の部分溶融岩は、高ヒマラヤ帯下~中部の白雲母の脱水溶融反応によって形成された中新世初期の部分溶融岩とは、高ヒマラヤ帯内部のせん断帯を境に区分される。高ヒマラヤ帯内部のせん断帯は、主中央せん断帯が活動する前の約2700-1900万年前に活動しており、高ヒマラヤ帯上部の上昇に重要な役割を果たしている。広域的に観察される部分溶融岩や高温変成作用の長い時間スケール(1000万年以上)を説明するためには、高ヒマラヤ帯の高温変成岩類の形成や上昇モデルとしては、チャネル流れモデルが適している。一方で、現在のチャネル流れモデルは、高ヒマラヤ帯内部のせん断帯を考慮しておらず、漸新世初期に高温変成作用が起きたことは説明できない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、ジルコンのウラン-鉛年代と希土類元素により、高ヒマラヤ帯の漸新世初期の部分溶融の証拠を新たに発見することができた。本研究結果は、ヒマラヤ変成岩類は、これまでに考えられている以上に、ヒマラヤ初期の地殻溶融によって影響を受けている可能性を示す。これらの結果は、国際誌に現在投稿中であり、当初の計画通り進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
東ネパールに分布する変成岩ナップは、部分溶融した珪線石ミグマタイトを含むが、圧力―温度条件や変成年代は不詳のままである。これらの部分溶融が、漸新世初期あるいは中新世初期に起きたものなのか、ジルコンのウラン-鉛年代を用いて明らかにする。 これまでの予察的な研究結果から、中央ネパールの主中央頂上断層上盤の藍晶石ミグマタイトは、漸進世初期に変成作用を被っており、昇温時に水に富む流体が関与した溶融反応である可能性が高い。ザクロ石のSm-Nd年代測定と相平衡計算により、その変成年代と溶融反応を明らかにする。ザクロ石のSm-Nd年代測定法が適用できない場合は、別手法を用いて変成年代を推定する。
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