2016 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権期における義務教育費の自治体間格差の要因研究
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16H07377
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
眞弓 真秀 (田中真秀) 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (50781530)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 教育財政 / 義務教育費 / 国と地方自治体 / 教員給与 / 中央集権 / 地方分権 / 自治体間格差 / 義務教育費国庫負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、当初の予定通り、1.国内文献レビュー調査、2.分析フレームの設定の集中作業を行った。また、予定より少し遅れているが3.国内先進自治体調査を実施した。 1.国内文献レビュー調査では、平成29年度実施が予定されている国内先進自治体調査に向けて、文献研究とウェブを用いての先進事例調査選定と先進自治体の情報収集を実施した。くわえて、既存の義務教育費の公的負担の議論について、ナショナルミニマムや教育の機会均等の視点から整理・検証をした。また、地方分権化における義務教育費の権限移譲の視点として、義務教育諸学校の教員給与費の国と都道府県の権限関係について既存の文献を整理・検討を行った。 2.研究の分析フレームについては、これまでの研究代表者の研究蓄積を踏まえ、地方分権改革後の教育費・義務教育費に関わる47都道府県毎のデータ収集を行い、簡易でわかりやすい表の入力方式を検討した。特に、義務教育費の大半を占める教員給与費とそれ以外の公的経費の区分についておこなった。 3.国内先進自治体調査については、自治体独自の教育費の決定過程に政治的側面が関与している可能性を検証するために、義務教育に関わる政策を決定する際の県議会等の会議録と教育費の推移を検証した。また、義務教育費の中でも教員給与費に焦点を当てて検証を行った。特に、国と都道府県が負担していた義務教育諸学校の教員給与費が、平成29年度より政令指定都市も給与負担する法改正について、教員給与格差が生じる可能性や政令指定都市が教員給与を負担するに至る過程についての教育委員会や教育関係者の議論や会議録について検証を行っている。また、義務教育の教員給与問題の根本である義務教育費国庫負担制度における国会の議論について、2000年以降の国会や文教委員会での会議録を収集・分析をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.国内文献レビュー調査、2.分析フレームの設定の集中作業は、ほとんど研究計画通り実施することができた。一方で、3.国内先進自治体調査は当初の研究計画とは少し異なる枠組みでの調査実施を行うなど、計画時点よりも遅れている現状である。 平成28年度においては、3.国内先進自治体への調査については、県議会の会議録の収集と分析方法の枠組みを決定することに焦点を当て、この点についてはほとんど予定通りの作業が実施できている。しかし、当初の予定であった先進自治体へのインタビュー調査はほとんど実施できていない。平成28年度では、義務教育費の中でも義務教育諸学校の教員給与に焦点を当て、政令指定都市に教員給与費の負担権限が委譲される実態について検討を行っている。政令指定都市の教員給与費の分析枠組みについては、平成28年度実施予定であった国内先進自治体調査の一環として調査を行っている。 これまでの義務教育費や教員給与費の調査を通じて、調査対象である先進自治体については、平成29年度に更なる調査を実施する予定である。 また、研究結果の報告については平成29年度行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実績をふまえ、平成29年度においては次のように研究を推進する。 1.調査・分析フレームの洗練:「研究実績の概要」に述べたように、平成28年度の調査・分析を通じて地方分権改革期における義務教育費の自治体間の差についての要因を検討する。その際の、詳細なフレームとして、教員給与費とそれ以外の経費を分けることの大切さについて言及している。平成29年度では、義務教育費のおける国の責任について、義務教育費の機会均等の立場から理論枠組みを作成する。 2.国内先進自治体調査の実施:平成28年度に実施した政策分析調査に加え、国内先進自治体へのインタビュー調査を実施する。特に、政令指定都市と中核市を取り上げ、教育費の詳しい分析と議会等の政策過程を調べる際に見いだせなかった視点について自治体へのインタビュー調査を行う。 加えて、政令指定都市に教員給与の負担権限が委譲された平成29年度時点の自治体間給与格差や教員給料表の制定方法について、自治体調査を行う。なお、調査予定地での調査が行えない場合は、別の自治体の選定とその地域の教育費や会議録の検討を行う。 3.研究の公表:上記の研究結果を学会発表または論文発表を行い、教育財政研究者間での建設的な議論を行い、さらなる教育財政研究の発展に寄与する。
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