2016 Fiscal Year Annual Research Report
決算発表の集中化が市場の効率性に影響を与える経路に関する実証研究
Project/Area Number |
16H07380
|
Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
森脇 敏雄 広島経済大学, 経済学部, 助教 (60780830)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 決算発表 / 市場の効率性 / 注意力の限界 / アナリスト予想 / 新聞報道 / 流動性の供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
決算発表の集中化は,投資家が1銘柄あたりに向けることのできる注意力を低下させ,その結果,利益情報に対する市場の効率性を低下させることが明らかにされている。本研究課題では,決算発表の集中化が市場の効率性に影響を与える経路をより厳密に検証するために,(1)決算発表の集中化が証券アナリストの利益予想に与える影響,(2)決算発表の集中化が決算情報の新聞報道に与える影響,(3)決算発表の集中化が投資家による流動性の供給に与える影響を調査している。平成28年度は,主として(1)と(2)の研究課題に取り組み,平成29年3月に北九州市立大学で開催された第2回JARDISワークショップにおいて,関連する研究成果を報告した。分析結果を要約すると,(1)決算発表企業数が増加するほど,決算発表後にコンセンサス予想の正確性が低下する確率が高くなり,決算情報が新聞報道される確率が低くなること,(2)決算発表企業数が増加するほど,決算情報が新聞報道される確率が低くなるという負の関連性は,市場からの注目度の低い企業でより強くなることが明らかにされている。以上の分析結果は,決算発表の集中化が市場の効率性に影響を与える経路として,証券アナリストの注意力の低下や新聞報道の制限が関連していることを示唆している。本研究成果は,学会ホームページを通じて会員向けに公表されている。また,(3)の研究課題については,当初の計画通り,文献の渉猟とデータ整備を実施した。文献の渉猟については,注意力の限界と流動性の供給の関連性を調査した研究を中心に,仮説構築と分析デザインを検討している。データ整備については,2015年1月1日から2015年12月31日までのティックデータを購入し,分単位で成行注文と指値注文のフローの特定を試みている段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,平成28年度において,データの整備と文献レビューを行う予定であったが,アナリスト予想と新聞記事データについて,当初の予定よりもデータの整備が早期に完了したため,平成28年度中に分析を実施し,第2回JARDISワークショップで報告することができた。一方で,流動性の供給への影響を調査するためのティックデータについては,当初の予定よりもデータの整備が遅れている。その原因として,大規模データを効率的に整備する技術の不足が挙げられる。現在,その技術の習得を早急に進めており,データ整備完了の見通しも立っている。以上の理由から,研究活動はおおむね順調であると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実績を踏まえ,平成29年度は主として次の2つの作業を予定している。第1に,平成28年度に第2回JARDISワークショップで報告した研究成果を改良し,査読誌へ投稿する。研究計画立案の当初は,日本経済新聞朝夕刊に取り上げられている業績関連ニュースのみを分析対象とすることを予定していたが,日経速報ニュースに取り上げられている業績関連ニュースも分析対象に追加する。それにより,分単位での分析が可能になるというメリットがある。得られた研究成果は,日本会計研究学会第76回全国大会(於:広島大学)で報告し,査読誌への投稿を進める。第2に,決算発表の集中化が投資家による流動性の供給に与える影響について,その分析と投稿を行う。分析にあたっては,2014年1月1日から2015年12月31日までのデータを利用し,決算発表時刻前後の成行注文フローと指値注文フローを特定する。その後,決算発表の集中度合いによって,そのフローの動向が異なるかどうかを確認する。得られた分析結果は,研究会等での報告を経て,2018年7月に公刊予定の国内誌に投稿する予定である。
|
Research Products
(1 results)