2016 Fiscal Year Annual Research Report
廃水処理における未解明現象「嫌気性バルキング」のメカニズム解明及び診断技術の創生
Project/Area Number |
16H07403
|
Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
黒田 恭平 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 助教 (50783213)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 嫌気性廃水処理 / グラニュール汚泥 / バルキング現象 / 16S rRNA遺伝子解析 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,芳香族化合物含有廃水を処理する上昇流嫌気性スラッジブランケット(UASB)反応槽保持汚泥の槽外への流出の原因を,網羅的DNA・RNA解析技術,顕微鏡観察技術,培養技術を駆使して生態学・分子生物学・工学的側面から多面的に解明し,バルキングを未然に防ぐための診断技術を開発することにある。本研究では,フェノール模擬廃水を処理するUASB反応槽に着目した。本反応槽は,フェノール模擬廃水を7年以上安定的に処理していたが,沈降性の優れた通常のグラニュール汚泥 (以下,沈降汚泥) の平均的サイズの10倍以上にもなる凝集塊 (以下,浮上汚泥) が形成され,汚泥が反応槽内で浮上し,流出する現象が確認された。本年度では,フェノール模擬廃水を処理するUASB反応槽で発生したグラニュール汚泥の肥大化現象の原因を,物理化学的および分子生物学的アプローチにより探索した。 沈降汚泥および浮上汚泥のSV30を測定した結果,肥大化した汚泥からなる浮上汚泥のSV30を測定することが不可能であった。この汚泥の肥大化が生じた原因を探るため,16S rRNA遺伝子を対象とした微生物群集構造解析を行った。結果,汚泥の肥大化発生前後 の微生物群集構造を比較すると,嫌気的フェノール分解にとって重要なSyntrophorhabdaceae科に属する微生物群の存在割合が著しく減少した。一方で,Caldithrixales目,Treponema属に属する未知微生物群が,浮上汚泥中で優占化しており,これら優占した微生物群が汚泥の肥大化現象に何らかの関与をしている可能性が考えられた。浮上汚泥・沈降汚泥の構成物質・代謝物質を比較解析するため,CE-TOFMSおよびLC-TOFMS解析を実施したが,抽出物から何かしらの測定阻害物質が検出され,抽出方法の見直しの必要性が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に従って、肥大化した汚泥の構成化学物質の同定をメタボローム解析により試み,データを取得した。UASB反応槽内の浮上汚泥および沈降汚泥の物理化学的特性と微生物群集構造を把握することが可能であった。一方で,メタボローム解析において、構成物資の抽出過程で阻害物質が検出され,本課題の解決に時間を要しているため,研究計画の実施が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,引き続きバルキング原因物質の探索,原因微生物及びバルキング発生に関与する遺伝子の推定を目的として① 浮上汚泥および沈降汚泥の構成化学物質の比較,② 浮上汚泥を構成する複合微生物群の回分培養実験およびRNAの発現解析, ③ 遺伝子・化学物質マーカーの選定およびバルキング原因微生物検出技術の開発を実施する予定である。
|
Research Products
(2 results)