2016 Fiscal Year Annual Research Report
可視光深撮像データを用いた超低温褐色矮星のキャラクタリゼーション
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16H07414
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小西 美穂子 国立天文台, 太陽系外惑星探査プロジェクト室, 特任研究員 (30780952)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 褐色矮星 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は「可視光での超低温褐色矮星のキャラクタリゼーションのための指標確立」を達成するために、1. 多量のデータを効率的に扱うための環境整備、2. HSC画像上で既知の超低温褐色矮星の同定、3. それらのリスト化や特徴量の抽出、4. (必要に応じて)暗い星の検出に特化したデータ解析およびパイプラインの作成、を行う計画であった。 それぞれの本年度の成果について以下に示す。1. 多量データを扱うためのデスクトップパソコンを設置した。またストレージも補強し大容量データを保存するための環境を整えた。2. 未知の褐色矮星同定の指標を作るため既知の褐色矮星の性質を調べた。まずこれらがHSCの画像で検出されているのかの確認を行った。M8型星からY型星までのカタログや発見報告論文を参考に、HSCのサーベイ領域内の座標のものをピックアップし、クイックルック上でそれらが少なくとも1つのバンドで検出されているかを確認した。その結果、117個の既知の褐色矮星が指標づくりのためのサンプルになり得ることを確認した。3. 2で抽出した既知の褐色矮星の性質をまとめ、指標づくりに適切な物理量を調べた。HSC各バンドの明るさ(g, r, i, z, Yバンド)とスペクトルタイプを元に二色図を作ってみたところ、i, z, Yバンドのカラーで良い相関が見られた。しかし、そのシーケンスから外れる褐色矮星や銀河などの混入により、カラーの情報から超低温褐色矮星のみを抽出することが難しいことがわかった。また、多量のカラーデータがHSCカタログに登録されているため、その中から効率的に褐色矮星候補を抽出する手段を考えなければならない。その解決策として、深層学習を取り入れようと試みている。4. HSCのコアメンバーと議論した結果、厳密な解析が行なわれているため、4については必要ではなくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に達成する目標として挙げた4つのことのうち、1と2については完遂し、3についてもほぼ目標通りに進んでいる。4については取り組む必要がないことが確認できた。したがって、本年度の目標はほぼ達成できているため、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究実績3で述べたように、褐色矮星の同定およびカタログからの候補選定の問題解決のために、深層学習を用いることを検討している。今後は、新装学習を行うための適切な教師データの作成、深層学習のためのパラメーター(層数・活性化関数・繰り返し数など)の調整を行う。この計算には大きなメモリーが必要となるため、本科研費で設置したデスクトップパソコン(研究実績1参照)を用いることで効率的に行えると期待している。銀河や他の星との分別を行い、確実に褐色矮星のみを抽出できるようになったのち、HSCの全カタログから褐色矮星候補の探査を行う。先の深層学習で確定したパラメータをもちいることでそれらの抽出が容易にできる。適切な候補が絞れた場合、それらが褐色矮星であることを確定するためにすばる望遠鏡などに赤外線での追観測の提案を提出する。 この深層学習による褐色矮星同定方法に関して、学術雑誌に投稿するための情報をまとめ始める。また、平成29年度中に本研究成果の国内研究会での発表を目指す。
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