2016 Fiscal Year Annual Research Report
混合膜中の界面構造制御による有機薄膜太陽電池の高効率化
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16H07421
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
伊澤 誠一郎 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (60779809)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 界面構造 / 電荷分離 / 電荷再結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機薄膜太陽電池は、低製造コスト、柔軟性などの多くの利点から、将来のエネルギー変換デバイスとして近年大きな注目を集めている。電子ドナー(D)である半導体高分子と、電子アクセプター(A)であるフラーレン誘導体を薄膜中で混合したデバイス構造が広く用いられ、その界面で励起子が電荷に分離されることで発電する。これまで主に半導体高分子材料の開発によりその光電変換効率は向上してきたが、未だ実用化に必要と言われる15%を達成するには至っていない。光電変換効率を制限する最大の原因として、D/A界面で起こる電荷分離・再結合過程に関連したエネルギーロスが存在し、出力電圧を大きく失うことが挙げられる。しかし、この制限がどのような機構で決まっているかは明らかでなく、そのためのD/A界面構造と電荷移動挙動の相関の精密な解析も行われていなかった。 そこで本研究ではD/A混合膜中における界面構造を制御することで、そのナノ構造と光電変換素過程との関連を明らかにすること、また有機薄膜太陽電池のデバイス性能の向上を目指して研究を行っている。今回、エネルギーレベルが同じ電子ドナーポリマーを用いて有機太陽電池を作製したところ、混合状態の違いにより開放電圧値に大きな差が表れることがわかった。光電変換素過程の観測から混合状態の違いによりD/A界面近傍での電荷対のクーロン束縛エネルギーが変化し、開放電圧値に差を生み出すことがわかった。これらの結果から、D/A界面近傍での電荷対のクーロン束縛を弱めることがデバイス性能向上の鍵であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回主鎖骨格が同じで側鎖構造のみ違うドナーポリマーを用いることで、エネルギーレベルは同じであるが、D/A界面近傍の混合状態が違うモデルケースを作り出すことができた。さらにデバイス構造を積層型のD/A界面がフラットな状態、短時間の熱アニールにより界面をわずかに混合させた状態を作り、それらのデバイス性能を比較することで、界面近傍のナノ構造と光電変換素過程との相関を調べることができた。これらのD/A界面の精密なナノ構造制御から、界面の混合状態の違いから電荷対のクーロン束縛エネルギーが変化すること、また電荷対のクーロン束縛を弱めることがデバイス性能向上の鍵であるという知見を見出すことができた。これらの研究成果は、投稿論文として執筆中である。このように本研究は期待以上の成果が得られており、さらに今後の研究の進展が大いに期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果で、デバイス性能向上のためにはD/A界面での電荷対のクーロン束縛エネルギーを小さくすることが重要であるとわかった。今回、混合状態の違いが引き起こすD/A間の距離の変化でそれを達成することができた。さらに今後は他の重要な界面近傍の性質である結晶性などについても精密に制御を行い、それらが光電変換素過程に与える影響を明らかにしていく。さらにそれらの結果から得られた理想的なD/A界面構造の知見を、ドナー/アクセプター材料のデザインに還元していくことで、最終的に有機薄膜太陽電池の性能向上を目指す。
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Research Products
(3 results)