2016 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス可視化植物を用いたタンパク質管理機構の解明
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16H07441
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
林 晋平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門 新産業開拓研究領域, 研究員 (40781323)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 小胞体 / ストレス / タンパク質 / 植物 / 変異体 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品等の有用なペプチドまたはタンパク質の生産系として、植物細胞はその一翼を担っている。生産工程で必ず生まれてしまう不良タンパク質の更生・除去・生産抑制等を担う小胞体のタンパク質管理機構がこれらの生産性を大きく左右するが、その詳細は十分にわかっていない。その全容を理解し制御するため、この未知の機構に異常が生じた突然変異体の分離と解析に取り組んだ。 平成28年度は、小胞体への不良タンパク質の蓄積を蛍光タンパク質で可視化したシロイヌナズナ形質転換体を用いて、蛍光パターンに変化のある突然変異体のスクリーニングを行なった。この形質転換体の種子に変異原処理を施し、自殖させて得たM2世代の幼植物体をスクリーニングに用いた。通常の生育条件において蛍光を強く発し、小胞体タンパク質管理機構の異常を示唆する個体を探索し、遺伝的に独立した数十個体の突然変異体の分離に成功した。強い蛍光を発する部位は、全身のもの、地上部または根だけのもの、維管束、メリステム、根毛細胞等の特定の細胞だけのもの等であった。これら多様な突然変異体が得られたことから、植物の成長や発達において小胞体は非常に大きな負荷を受ける潜在的リスクにさらされており、通常はこれを巧みに抑えていることが示唆された。得られた突然変異体の形質を正しく評価するため、変異原処理を施していない親株または野生株との戻し交配を行ない、系統化を進めた。また、目的の形質と連鎖するゲノム領域を調査(連鎖解析)し原因遺伝子を同定するため、突然変異体とは異なる生態型の株との交配を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、平成28年度では多数の突然変異体の分離に成功した。得られた突然変異体の中には生育・発達・稔性等に異常がありそのままでは形質の評価や連鎖解析が困難なものが含まれていたため、系統によっては、戻し交配や世代間の形質比較を研究開始当初の予定よりも時間をかけて行なうことになった。いくつかの系統については、計画通り、連鎖解析の準備を進めることが出来ているため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、計画の通り、前年度に得られた突然変異体について原因遺伝子探索を進める。育成スペースに限りがあり多くの突然変異系統を同時に扱うことは困難であるため、興味深い形質または識別しやすい形質を示す数系統についての解析を先行させる。突然変異体の探索はまだ全てのM2種子(由来するM1植物の違いで分けている)で実施していないため、新しい突然変異体の分離も引き続き行なう。連鎖解析による原因遺伝子の絞り込みが困難である場合は、代替策として全ゲノム配列決定による変異の探索を検討する。原因遺伝子候補の同定後は、相補性試験やアリル変異体の解析を行ない、目的の原因遺伝子であることを遺伝学的に検証する。また、原因遺伝子産物の小胞体タンパク質管理機構における役割を、生化学的、生理学的、遺伝学的手法を駆使して調べる。原因遺伝子候補が未同定である期間は、遺伝子発現解析による小胞体のストレス状態評価等を行ない、突然変異体の特徴づけを進める。一定の研究成果が得られ次第、学会発表や論文発表を行なう。
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