2016 Fiscal Year Annual Research Report
形態化連合過程における海馬の時間符号化を形成する多領野間ネットワークメカニズム
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16H07444
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺田 慧 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (80780387)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 形態化連合 / 海馬 / 前頭前皮質 / 膨大後部皮質 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
連合過程は、記憶や認知などあらゆる心的機能の基礎を成す過程である。本研究はその中でも、要素間の連合により要素単体が持ち得なかった情報が新たなに現れるという形態化連合過程に焦点を当て、その神経メカニズムを海馬、前頭前皮質、膨大後部皮質における相互作用の観点から明らかにしていく。応募者のこれまでの研究成果にから、要素の関連づけから情報の創発までの一連の過程が、海馬の時間符合化により表現されることが分かっていた。しかしながら、海馬の時間符号化は前頭前皮質や膨大後部皮質の影響を受けない独立した情報処理ではなく、むしろこれらの部位との相互作用によって実現するものである。本研究は、前頭前皮質と膨大後部皮質が海馬の時間符合化にどのような影響を与えるのかを検討することで、海馬の時間符合化による形態化連合過程の脳内表現をネットワークレベルで捉えることを目的とした。 本年度において、形態化連合過程における海馬‐膨大皮質‐前頭前皮質ネットワークのダイナミクスを大規模細胞外記録により計測することに成功した。これにより、まず、各領野から本行動課題の遂行に必要な、音、匂い、組み合わせ、選択行動といったそれぞれの情報に反応する細胞が多数観察された。領野ごとにそれらの割合が異なることが分かり、各領野がそれぞれ異なる役割を果たすことが示唆された。さらに、各領野間の相互作用を検討するために、局所場電位間のコヒーレンスを解析したところ、領野間の同期活動が情報処理プロセスに応じて、ダイナミックスに変移していることが分かった。以上のことから、異なる機能を持つ各領野が相互に影響を与えることで、形態化連合を実現することが示唆された。今後はさらなる解析を加えて、各領野の機能と相互作用を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非常に難易度の高い三つの脳部位からの同時記録に成功して、非常に興味深いデータを取得するに至ったことが理由である。本研究における行動実験と電気生理学実験は極めて難易度高い。本研究以外に、これらの難易度の高い両実験を組み合わせたものはないことから、本研究は非常に独創的でインパクトの強い研究であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる解析を加えることで、形態化連合過程における海馬、PFC、RSCの相互作用の重要性と海馬の時間符号化への影響を明らかにする。これらの結果を用いることで、海馬を用いた既存の記憶モデルを局所回路演算的なものから包括的回路演算のモデルに拡張させることができ、これらの神経メカニズムの全容解明に大きく貢献することを目指す。
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Research Products
(1 results)