2016 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホールのエントロピーの二面性の統一とホログラフィの起源の解明
Project/Area Number |
16H07445
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
横倉 祐貴 国立研究開発法人理化学研究所, 分野横断型計算科学連携研究チーム, 基礎科学特別研究員 (50775616)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | ブラックホール / エントロピー / 量子重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)私は、4次元の球対称崩壊物質の時間発展を、conformal物質に対する半古典的なEinstein 方程式をself-consistent に解くことによって、解析した。ここで、物質は量子場として、重力は古典的な時空計量として扱われ、Hawking 輻射のback reaction も考慮される。その結果、崩壊物質は、外からは普通のブラックホールに見えるが(もし理論が大きなc係数を持つならば)ホライズンも特異点も持たない高密度な星になり、蒸発する。注目すべきは、ある条件下で4次元のWeylアノマリーがエネルギー運動量テンソルの期待値の全成分を決定できることである。今回の結果は、これまでのmassless scalar場のs波やアイコナール近似などの条件を用いた研究を越え、球対称性の条件だけから得られる非常に一般的なものである。[arXiv: 1701.03455] 2)以前の「ネーター保存量としてのエントロピー」は古典N粒子系の対するものであった。その量子版を作るべく、私は時間依存した外部パラメータをもつ量子多体系を考え、熱的純粋状態の方法を一般化させ、そのユニタリー時間発展を熱力学的状態空間における経路積分として定式化した。その有効作用には、熱力学エントロピーがその正準共役量とともに現れる。そして、外部パラメータがゆっくり変化する場合には、その共役変数の並進対称性が経路積分に出現し、それがエントロピーの期待値の保存則を導く。この対称性は古典のものと同じ形をしている。また、この経路積分の表示は熱力学と量子力学をダイナミクスのレベルで繋げる基礎となりうるものである。[arXiv:1611.07268]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力のエントロピーの具体的な描像を明確にするため、4次元ブラックホール蒸発モデルを研究した。今回、球対称性だけに基づいて場の理論的構造が整理できたことは大きな進歩である。「ネーター保存量としてのエントロピーの定式化」の量子版は、当初は方針が揺らいでいたが、新しい共同研究者(杉浦氏)が加わり、熱的純粋状態の定式化が大きく進展し、そして、経路積分における対称性という形で定式化できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ブラックホールの内部を記述するself-consistentな計量解に基づき、物質場を場の理論的に解析する。そして、「内部では物質はどのように振る舞っているのか?」を理解し、その立場から、ブラックホールエントロピーを場の理論的に調べる。 2)一般の物質の熱力学的エントロピーを導く時間の非一様な対称性は、実は、ネーター保存量としてのブラックホールエントロピーを導く対称性と同じものである。この点に注目し、そもそもWaldによる最初の定式化は熱力学において何をやっていることに対応するのか?を物理的に理解することを試みる。
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Research Products
(6 results)