2016 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of superconductivity in strongly correlated quasicrystals
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16H07447
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹森 那由多 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (10784085)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、広義の結晶でありながら並進対称性を持たない強相関準結晶物質Au_51_Al_34_Yb_15_ において電子相関に由来した量子臨界的挙動が発見された。さらに、この挙動は圧力に対して堅牢かつ長周期構造を持つ近似結晶においては出現しないため、準結晶の幾何学的構造を記述する準周期性が本質的な要因となる量子臨界性の存在を示している。準周期格子はフラクタル格子の1つであり、その幾何学的構造を反映して、自由電子模型において無限重縮退をもたらす自己相似状態などが厳密な固有状態として現れる。このため、強相関効果により量子臨界性のみならず多彩な物性が低温領域において発現することが、同様の無限重縮退が現れるカゴメ格子やパイロクロア格子における研究結果の類推から予想される。 最近、強相関準結晶物質Au_51_Al_34_Yb_15_と類似したクラスター構造を持つ近似結晶Au_64_Ge_22_Yb_14_及びAu_63.5_Ge_20.5_Yb_16_において超伝導相が発見されたことにより、並進対称性のない準結晶系での超伝導の実現可能性及びその機構の解明が期待されている。しかしながら、強相関準結晶物質における超伝導現象は理論的にほとんど調べられておらず、また、並進対称性のない系における超伝導状態は非自明で、どのようにクーパー対が形成されるのかという疑問が生じる。この問題に理論的に取り組むため、2次元ペンローズタイリング上の引力ハバード模型に問題を設定し、南部形式に拡張した実空間動的平均場近似の範囲で数値的に解析を行った。その結果、低温で実際に超伝導が発現し、電子数と相互作用の強さをパラメータとした相図上で局所・短距離・長距離の電子がクーパー対を組む3つの異なる性質を持った超伝導状態が現れることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回発見した超伝導状態は、周期系でよく知られているBCS-BECクロスオーバーとは異なっており、また中でも弱相関で現れる超伝導状態は最近報告されたAl-Mg-Zn準結晶で発現した超伝導状態と関連する可能性があるため。
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Strategy for Future Research Activity |
最近報告されたAl-Mg-Zn準結晶で発現した超伝導状態と関連する可能性があるため、今後 比熱などの実験観測量を計算することによりその異同を調査する。また、本年度では超伝導状態形成のための引力形成機構については議論しなかったため、クラスター内/間フォノンの解析などが必要となる。
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Research Products
(1 results)