2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H07454
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
武尾 真 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (50782116)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 器官再生 / 毛包上皮幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究は、研究実施計画に沿って進捗し、下記の成果を得た。 1)「器官誘導能を持つ毛包上皮幹細胞の同定と器官誘導能の分子機構の解明」従来の器官原基法を発展させ、一つの細胞から増幅させたスフェロイドを使った機能解析実験系を確立し、毛包上皮細胞一つ一つの機能を解析することが可能となった。また、細胞増殖率、生存率、形態的特長などの性状解析を進め、バルジ領域の一部の細胞のみが毛包全体を再生しうることが明らかとなった。 2)「毛包上皮幹細胞の未分化性と増殖能を制御する分子機構の解明」 複数のサイトカインおよび阻害剤を用いて生体内での毛包幹細胞の維持機構を再現することにより、毛包全体を再生可能な幹細胞を増殖させることが可能であることを明らかにし、各シグナル経路の機能評価を進めている。また、培養過程で1つの細胞から形成されたコロニーに複数の異なる毛包幹細胞マーカーを発現した細胞が含まれ、培養条件やコロニーによりマーカー発現の組み合わせや頻度が異なることも見出した。これは、培養条件により未分化性が異なること、またたとえ同じ培養条件でも細胞により未分化状態が異なることを示唆している。さらに、未分化性と増殖能を同時に維持する分子機構を明らかにするために、培養過程での複数のタイムポイントでの遺伝子発現プロファイルを次世代シーケンスにより比較し、データの解析を進めている 3)「毛包上皮幹細胞の臨床応用へ向けた技術開発」 本研究項目は29年度に実施を予定していたが、マウス細胞を用いた培養系が確立したことから、予定を前倒しし、ヒト毛包上皮細胞の培養実験を実施した。その結果マウスと同様の方法で増殖可能であることが示された。また、サイトカインの種類や濃度の検討などの培養条件の最適化に加え、再構成方法の改良など効率よく毛包を再生させる技術の開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の年度計画に対し、項目1)は順調に推移しており、平成28年度計画も達成され、さらに研究を進める。項目2)については、生体内での毛包幹細胞の維持機構を再現することにより、毛包全体を再生可能な幹細胞を増殖させることが可能であるかの検証は達成された。また、分子機構の解明に関しても遺伝子発現プロファイルの取得は既に完了しており、解析が終了し次第機能解析を行う準備を進めている。項目3)に関しては、予定を前倒しし、研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進については、項目1)は平成28年度の課題が達成できたことから、予定通り器官誘導能の分子機構の解明を進める。項目2)については、共同研究なども選択肢に入れ、遺伝子発現プロファイルの解析を早急に進め、分子機構の解析を中心に進める予定である。項目3)については、引き続き研究を進めていく。
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