2016 Fiscal Year Annual Research Report
自己入射方式レーザー航跡場加速における電子入射点の解明
Project/Area Number |
16H07459
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
中新 信彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員(定常) (70615509)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | レーザープラズマ加速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高強度・超短パルスレーザーによって励起される航跡場(プラズマ波)から生成される高エネルギー電子加速の研究において、従来解明されていない、プラズマ電子が波の破砕により加速場に入射される位置の特定を行うことを目的としている。本年度はまず高強度レーザーを用いてレーザープラズマ加速による電子発生実験を行い、発生した電子の空間分布およびレーザーの入射方向に対して横方向への自発光・散乱光の空間分布の観測を行ったところ、電子ビームの空間分布と散乱光の強度が強い位置に相関が見られた(現在解析中)。電子入射点と想定される散乱が強く起こる場所がビームの品質に影響を与えることがわかった。この実験と並行し、拡大顕微鏡とイメージング分光器とを組み合わせた高空間分解イメージング分光システムの開発を行った。まず、散乱光を広帯域で分光できるように既存の分光器のグレーティングを選定し、さらにガスの密度から想定されるプラズマ波の波長を分解可能な顕微鏡用対物レンズ・接眼レンズの選定を行い購入した。そして、結像面が分光器の入り口のスリットになるようレンズを配置したシステムを構築した。近日中に分解能等の評価試験を行い、レーザー加速実験での自発光・散乱光の高空間分解イメージング分光計測に用いる。さらに、偏向磁石を用いた電子のエネルギー計測装置を用いて、高エネルギー電子ビームのエネルギーを計測し、数百MeV超える電子の発生を確認している。ショットごとによるエネルギーの安定性があまり高くないことを確認しており、上記の高空間分解イメージング分光システムを導入し、原因の特定を図る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は拡大顕微鏡とイメージング分光器とを組み合わせた高空間分解イメージング分光システムの設計・開発を行い、このシステムを用いてレーザー航跡場加速で起こる高強度レーザーパルスの散乱やプラズマからの自発光のイメージおよびスペクトルの空間分布をプラズマ波長以下の空間分解能で取得する予定であった。高空間分解イメージング分光システムの設計および構築は完了したが、実際にレーザープラズマ加速実験での自発光・散乱光の分光計測までには至っておらず、予定よりやや遅れている。しかし、電子入射点と考えられる散乱が強く起こる場所とビームの品質に大きく関連性があることを確認したほか、エネルギー計測器などの準備も完了しており本年度の早い段階で実験を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は開発した高空間分解イメージング分光システムを用いてレーザープラズマ加速実験での自発光・散乱光の分光計測を行い、自己入射LWFAの電子入射点の特定を行う。さらに極短パルスプローブを用いた航跡場計測を併用し、航跡場中での電子入射点の正確な位置を特定する。高強度レーザーの条件やガスの圧力(プラズマの電子密度)を様々に変化させ、電子入射が起こる条件、起こらない条件、複数の電子入射が起こる条件で計測を行い、散乱光・自発光の様子がどのように変化するかを調べることで、散乱および自発光の発生のメカニズムを理解し、波破砕による電子入射の物理を理解する。同時に電子のエネルギーの計測を行い、電子入射点と電子のエネルギーの相関関係を調べることで、レーザー加速電子の安定化への道筋を立てる。
|