2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H07479
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
權 靜美 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (60724094)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 星・惑星形成 / 円偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、すばる望遠鏡などを利用して、惑星形成領域における赤外円および直線偏光観測を行うことを目指している。惑星形成の場である原始惑星系円盤の観測には、0.1秒角程度の解像度が不可欠であり、8m級望遠鏡と補償光学の利用が不可欠である。本研究の究極的な目標は以下のとおりである。世界で初めて 0.1秒角での赤外円偏光観測を実現し、これによって、原始惑星系円盤の円偏光場をマップし、散乱の効果および磁場の影響について、直線偏光と組み合わせて解明することである。同じデータから、円盤上層部のダストサイズ・性質の情報も得ることも期待できる。これと並行して、より大きなスケールでの赤外円偏光観測も継続し、さまざまなスケールでの円偏光の振舞を理解する。 本研究のため、1年目は南アフリカにある近赤外線サーベイ望遠鏡 IRSF を用いて星・惑星形成領域の円偏光サーベイ観測を行い、その結果を欧文査読論文として出版した(Kwon et al. 2016a, ApJ, 824, 95, Kwon et al. 2016b, AJ, 152, 67)。本研究は、今後、円盤スケールでの円偏光と生命のホモキラリティーの議論を初めて行うことにつながる。 さらに、すばる望遠鏡において高解像度赤外円偏光の試験観測を行うための偏光器のアップグレードも進めた。 本研究で取得している円偏光データは、いずれも過去にはない全く新しいデータであり、星形成、円盤およびアストロバイオロジーの研究に新展開をもたらすものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前準備として、 HiCIAO用に開発された偏光装置を IRCSでも使える円偏光観測装置にアップグレードを計画通り行った。平成 28 年度中に準備した円偏光器の実観測における較正を行いつつ、研究代表者のこれまでに円偏光データの解析の深い経験を元に、解析ソフトウェアを整備した。観測ソフトウェアについては、直線偏光モードのものを利用して、比較的容易に準備できた。悪天のため、本観測のデータは取得できなかったが、SEEDS プロジェクトにより発見された円盤のうち、円偏光の有意な検出が期待される明るい天体を最優先としたターゲット選定もすでに終わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、とりわけ世界的にも未開拓の円偏光観測の高解像度化の実現化を目指して本研究を進めたい。去年、本研究のためのハードウェア・ソフトウェア製作および試験観測を行い、データ解析を進めている。「すばる望遠鏡のための円偏光機能アップグレード」をハワイ観測所と共に進めており、研究代表者は波長版回転機構の追加ハードウェア製作・ソフトウェアのアップグレード、追加観測とサイエンス検討を主導している。以下に、本年度のタイムスケールでの具体的な研究計画・方法について記述する。
1)事前準備として、HiCIAO用に開発された偏光装置の円偏光観測用アップグレードを行い、現在は IRCS でも使用することができるようにした。 2)1年次は悪天候のため高解像度の円偏光のサイエンス観測ができなかったが、平成29年度中に準備した円偏光偏光器の実観測における較正を継続しつつ、ソフトウェアのアップグレードを整備する。 3)上記の較正確認後、再度本番観測を進める。ターゲット選定は、SEEDS プロジェクトにより発見された円盤のうち、円偏光の有意な検出が期待される明るい天体を最優先とする。星形成領域が対象となるため、夏季と冬季にそれぞれ1回の観測とする予定である。個々の天体の詳細な議論には、赤外線天文衛星「あかり」のデータを用いてSEDモデリングも行うなど、多波長側の定量的な解析を進む。 4)上記で得られたデータ(合計約40個;1個でも新しいデータとなることに注意)について、天体個別、かつ、すべての天体に対して系統的な議論を行う。そして、その結果を個別天体と統計議論に分けて査読誌に発表し、プレスリリース等の成果公表を行う。
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