2016 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性電極代謝微生物群の取得とそのシングルセル機能解析
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16H07492
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
鹿島 裕之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, ポストドクトラル研究員 (70780914)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 電気合成 / 細胞外電子伝達 / 海洋微生物 / 微生物電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞外電子伝達によって電極から電子を取り込むことで独立栄養的に生命活動を営む電気合成微生物を取得し、その機能を理解することを目標としている。本年度は、細胞外電子伝達を伴う微生物活動が示唆されている海洋の海底面近傍に由来する環境試料を播種源に、還元的電位を印加した電極を唯一の電子源、無機炭酸を炭素源とした独立栄養・カソード電極リアクタ培養系を立ち上げ、1次集積培養に成功した。 具体的には、深海熱水噴出域の環境試料を採取し、それを播種源に酸素および硝酸を電子受容体として与えたリアクタ培養を行った。約1カ月間のリアクタ運転において、安定的なカソード電流生成と電子受容体の減少、そして電極表面への微生物細胞群の集積を確認した。非電位印加対照、および非植菌対照との比較から、集積した微生物細胞群を介してカソード電極酸化と酸素・硝酸還元が行われたことが示唆された。この微生物を介した電極から酸素・硝酸への電子の流れは電気合成反応によるもので、集積された微生物細胞群の中にはこの反応を担う微生物が存在していると予測される。 1次集積培養後、微生物細胞群が集積したカソード電極および培養液を更なる集積培養のための播種源として採取・保存した。また、それらの一部から微生物群集構造解析を行うためにDNAを抽出した。現在、1次集積培養産物を播種源として新たなカソード電極リアクタを運転し更なる集積培養を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の進捗状況として、深海熱水噴出域の環境試料を採取し、それを播種源として独立栄養・カソード電極リアクタ培養系を立ち上げた。また培養実験において標的としている電気合成反応が示唆された系での微生物群の1次集積培養に成功したために、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに引き続き独立栄養・カソード電極リアクタ培養系において電気合成微生物の集積培養を行うとともに、集積された微生物群の系統および機能を解析する。集積培養実験では、これまでに1次集積に成功した微生物群から更なる集積培養を進めることに加え、複数の新たな環境試料を播種源とした集積培養を行う。 集積微生物群の系統・機能解析では、16S rRNA遺伝子解析で構成微生物群の系統を明らかにし、安定同位体取込み培養実験と電気化学刺激への代謝活性変化の応答を指標として構成微生物の機能を解析する。これに際し、16S rRNA遺伝子系統解析では既に一般化した方法を踏襲するが、電気化学刺激への代謝応答を指標とした機能解析では新たに実験系を確立する必要がある。そこで、これまでに電極との電子授受が確認されている微生物単離株を用いて実験系を立ち上げ、そのうえで集積培養を行った海洋環境由来の微生物群の解析を行う。
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