2016 Fiscal Year Annual Research Report
温度応答性セグメントを組み込んだ生分解性高分子ミセル型核酸キャリアの構築
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16H07494
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Research Institution | Kawasaki Institute of Industrial Promotion Innovation Center of NanoMedicine |
Principal Investigator |
林 光太朗 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), 川崎市産業振興財団, 研究員 (00780660)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 核酸デリバリー / バイオマテリアル / 核酸医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
生分解性ポリマーをベースとしたASO内包ミセルの調製のため、親水性の保護層であるポリエチレングリコール(PEG)セグメント、温度応答性セグメントとして生分解性のあるポリアミノ酸由来のポリマー、ポリカチオン性ポリアミノ酸を有する三元系ブロック共重合体の合成を検討した。まず、温度応答能を確認するため、PEG-ポリアスパラギン酸(PAA)にアミノアルコール(NH2-CnOH)を導入したポリマーの合成を行った。当研究室によった合成手法に則り、PEG-ベンジル基保護PAAと過剰量のアミノアルコールを反応させることにより、二元系ブロック重合体の合成を行った。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)より単一の成分が、核磁気共鳴法(NMR)によりアミノアルコールは90%導入されていることが確認された。光散乱法により、20℃から60 ℃の範囲でポリマーの凝集状態の追跡を行ったところ、測定した温度域で凝集状態に変化が見られなかった。そこで、温度応答性をより詳細に検討するため、温度応答性PAAセグメントのみからなるポリマーの合成を検討した。しかし、先ほどの手法では側鎖修飾率が40%程度まで低下した。そこで、先行論文に記載されている手法に変更したところ、PAAポリアミノ酸主鎖の分解がみられ、低分子アミノ酸となっていることがSECにより観察された。また、側鎖修飾率40%のポリマーについて温度応答性の確認の試みを行ったが、低温状態でも水への溶解性が著しく低下していたため、疎水性が高く温度応答性はないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状の合成手法では、PAAベースの温度応答性セグメントは、その分解性の高さから、安定性と温度応答性を両立することが難しいことがわかった。このことから、三元系トリブロック共重合体に組み込むことは難しいと考えられる。このため、ポリマーデザインを再考する必要があることがわかった。この結果は、当初の計画作成時点では想定できなかったことであり、研究計画に数ヶ月の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、引き続き三元系ブロック共重合体の合成の検討を行う予定である。前年度の結果を考慮し、分解性の低いポリグルタミン酸(PGA)の側鎖にNH2-CnOHを導入した高分子の合成と物性の検討を行う。まずは、PEGやポリカチオンを含まないPGA高分子を合成し、温度応答性を確認する。その後、三元系ブロック共重合体の合成を行い、当初の機能性高分子の検討を行う。合成した三元系ブロック共重合体はNMRやSECにより分析する。また、光散乱法や示差走査熱量計を用いて、温度応答能の評価を行う。 合成した各種高分子とASOとを氷冷下にて水溶液中で混合し、高分子ミセルの調製を行う。調製した高分子ミセル溶液をヒトやマウスの体温に近い37 ℃に昇温することで、温度応答性セグメントを疎水化し、中間保護層を形成する。以降の評価は37 ℃にて行う。電気泳動や光散乱法、電子顕微鏡を用いて、ミセルの構造解析を行ったあと、生体内でPIC型高分子ミセルの障害となる血清タンパクやポリアニオンが誘起する解離を、異なる濃度の血清やヘパラン硫酸と混合し、蛍光相関分光法や電気泳動を用いて評価する。また、その中での有望な候補に対して、蛍光標識核酸を用いてミセルを作成、動物に投与し、その蛍光強度の継時変化を観察することで、生体内安定性の評価を行う。側鎖に導入する網のアルコールのアルキル鎖の少なした温度応答性を有さないポリマーと比較することにより、生分解性の温度応答性三元系ポリマーによるミセル安定化の実証を行う。
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