2016 Fiscal Year Annual Research Report
DOHaD概念に基づくω3不飽和脂肪酸摂取による新規生活習慣病発症予防法の開発
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16H07498
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
井上 隆之 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (50581386)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / DOHaD / ミクログリア / 骨格筋 / 慢性炎症 / オメガ3不飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生活習慣病におけるオメガ3不飽和脂肪酸摂取による抗炎症効果を介した脳神経保護効果と骨格筋量の改善効果に着眼した。初年度は脳内炎症に関連するミクログリアについて、オメガ3不飽和脂肪酸による炎症抑制作用とその分子機構を検討した。認知・情動機能低下と筋力低下との関連が報告されており、特に高齢者では、認知・情動機能が加齢性筋委縮に関連することが報告されている。生活習慣病の基盤として注目されている全身性慢性炎症は血中炎症性サイトカインや神経系等を介して脳内に影響し、脳の恒常性維持を担うミクログリアを活性化して炎症性サイトカインを産生させることで、神経機能傷害とそれに伴う認知・情動機能低下を誘導する可能性が指摘されている。さらに、加齢や神経筋疾患における筋力低下の原因として神経原性変化に起因した運動単位数の減少が示唆されており、脳内慢性炎症による神経変性が筋力低下に関与している可能性があるが、未だその詳細は不明である。 初年度、申請者はミクログリア株を用いたオメガ3不飽和脂肪酸による慢性炎症への影響とその機序に対するin vitro実験を進め、分子遺伝学的・生化学的解析を行った。オメガ3不飽和脂肪酸は、ミクログリアにてNAD+依存性脱アセチル化酵素であるSIRT1活性化を介して転写因子NF-κBを抑制し、過剰な炎症を抑制するとともに、SIRT1依存的にオートファジーを誘導することが示唆された(日本肥満学会2016)。 申請者はさらに、NAD recyclingにおける律速酵素NAMPTの選択的阻害により、IL-6産生に変化はなかったことを示した。オメガ3不飽和脂肪酸は、ミクログリアにてSIRT1を特異的に活性化させ、NF-κBリン酸化を抑制することにより炎症性サイトカイン産生を抑制し、細胞小器官の品質管理・機能維持に寄与する可能性を初めて明らかにした(BBA, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.本研究の初年度は、ミクログリア細胞株(MG6)を用いた慢性炎症発症およびその抑制機構を実証するため、オメガ3不飽和脂肪酸負荷の有無別に、LPS刺激による炎症性サイトカイン誘導に対する影響を分子遺伝学的・生化学的解析を用いて比較検討した。 2.オメガ3不飽和脂肪酸は、ミクログリアにてNAD+依存性脱アセチル化酵素であるSIRT1活性化を介して転写因子NF-κBを抑制し、過剰な炎症を抑制するとともに、SIRT1依存的にオートファジーを誘導することが示唆された(日本肥満学会2016)。 3.また、NAD recyclingにおける律速酵素NAMPTの選択的阻害実験により、IL-6産生に変化はなかったことを示した。 4.以上より、オメガ3不飽和脂肪酸は、ミクログリアにてSIRT1を特異的に活性化させ、NF-κBリン酸化を抑制することにより炎症性サイトカイン産生を抑制し、細胞小器官の品質管理・細胞機能維持に寄与する可能性を初めて明らかにした(BBA, 2017)。 5.現在、筋芽細胞株C2C12を用いて、増殖期、分化期、成長期の時系列におけるオメガ3・オメガ6不飽和脂肪酸負荷の有無別に、LPS刺激による炎症性サイトカイン誘導に対する影響の比較検討準備を進め、慢性炎症発症およびその抑制機構を実証する準備を進めている。 6.併せて、マウス母胎(妊娠期~授乳期)に対する、高脂肪食負荷およびオメガ3オメガ6不飽和脂肪酸投与準備を進めている。現在プレリミナルな実験として、妊娠1週間前より普通食群と高脂肪食群に分け、高脂肪食負荷による妊娠期~授乳期マウス仔における脳内炎症や筋量・組成解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
I. オメガ3・オメガ6不飽和脂肪酸投与による筋芽細胞株を用いた筋線維タイプ変化の検証 母体の摂取脂質の質に着目した、児の器官形成後期、授乳期および青年期におけるオメガ3・オメガ6不飽和脂肪酸による大脳皮質・海馬および骨格筋における炎症性サイトカイン、酸化ストレスやその関連シグナルへの影響を解析する。本年度までの研究成果に立脚し、筋芽細胞株C2C12を用いた他の先行研究(Lipids Health Dis, 2008等)を参考に、増殖期、分化期、成長期の時系列におけるオメガ3・オメガ6PUFA負荷の有無別に、リポサッカライド(LPS)刺激による炎症性サイトカイン誘導に対する影響を比較検討する。投与後の培養上清や培養細胞における炎症性サイトカイン、酸化ストレスやその関連シグナル・転写因子発現をFACS(fluorescence activated cell sorting)、qPCRやWestern blot等から解析する。筋線維型解析は、申請者の用いたミオシン重鎖組成分離方法(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids, 2014; Mol Cell Biochem, 2016)を用いて各期におけるミオシン重鎖構成比を解析し、PUFA負荷による骨格筋組成の改善効果を検証する。 II. 妊娠期・授乳期・成体期オメガ3・オメガ6不飽和脂肪酸投与実験 離乳後雌マウスに妊娠前から授乳期にかけて(13~17週間)、オメガ3および対照となる多価不飽和脂肪酸としてオメガ6を経口投与する。さらに離乳後の成体期雄ラットを用いて、継続投与群と投与終了群に分け、各期における以下の研究計画に基づいて実験・解析を進めDOHaD概念に基づくオメガ3不飽和脂肪酸の新規作用を確立し、生活習慣病・心血管病発症予防に繋がる効果的な新規栄養指導法を確立・提唱する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Omega-3 polyunsaturated fatty acids suppress the inflammatory responses of lipopolysaccharide-stimulated mouse microglia by activating SIRT1 pathways.2017
Author(s)
Inoue T, Tanaka M, Masuda S, Ohue-Kitano R, Yamakage H, Muranaka K, Wada H, Kusakabe T, Shimatsu A, Hasegawa K, Satoh-Asahara N
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Journal Title
Biochim Biophys Acta
Volume: 1862
Pages: 552-560
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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