2016 Fiscal Year Annual Research Report
ジヒドロチミジンを指標とした新規照射食品検知法の実用化に向けた基盤研究
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16H07502
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
藤原 拓也 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 研究員 (70783819)
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Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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Keywords | 食品 / 衛生 / 分析科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線照射により食材中の DNA から生成する特異的な損傷ヌクレオシドである 5,6-Dihydrothymidine (DHdThd) を指標とした新規照射食品検知法を開発することを目標としている。DNA はあらゆる食品中に存在することから、多様な食品に適用可能な照射履歴検知方法となる可能性がある。 当研究所において、既にガンマ線照射したレバー等の畜水産物試料において DHdThd が特異的かつ線量依存的に生成していることを報告している。一方、食品照射に利用されている放射線の種類としては、ガンマ線の他に電子線を照射する方法も利用されている。電子線照射食品試料における DHdThd 生成を確かめるため、照射施設を持つ企業に照射を依頼し、ガンマ線と同様の方法で DHdThd の検出を試みたところ、線量依存的な DHdThd の生成が確認された。この線量依存性は、3つの異なる販売元から入手したレバーにおいても確認され、本法の電子線照射試料における有用性が示された。 また、本法の実用化に向け、DNA の抽出および精製法を改良することが必要である。レバー試料における DNA 抽出にヨウ化ナトリウムを用いることにより、収率を改善することが可能であった。また、香辛料試料において塩化ベンジルを用いた方法により一部試料から DHdThd を検出することができたが、 DNA 量の不足や色素等の夾雑成分が多い試料等がみられ、これらの改善が今後の課題である。 更に、調理後の試料における本法の有用性を確認するため、電子レンジで中心温度が75℃以上を1分間保つように加熱したレバー試料を用いて DHdThd 検出を試みたところ、加熱試料からも DHdThd を検出でき、加工食品等における本法の有用性が示唆された。今後は、より多種の試料で、また他の調理法において本法の適用可否を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子線照射したレバー試料においても線量依存的に DHdThd が生成していることが確認できた。同一個体由来の試料を電子線照射用試料とガンマ線照射用試料とに分け、短期間に照射し DHdThd を検出することにより、生成量や鏡像異性体比などの差異を直接比較検討することができた。また、DNA 抽出手法の改良によりレバー試料等の畜産物における収率の改善をみることができたが、香辛料等の植物試料においては、さらなる手法の改善が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本法の実用化に向けた各種検討を更に進める。現在、電子線照射した試料を長期保管しており、照射から長期間経過した試料においても DHdThd が検出できることを確認する。また、レバー以外の試料についても電子線照射し、ガンマ線照射時との比較検討を行う。その他、ガンマ線・電子線照射試料における調理後の影響についても前年度よりさらに詳細に検討する。また、DNA 抽出・精製手法の改良により、より多くの種類の試料において本法が適用可能であることを示す。特に、海外において照射が実用化されている香辛料について本新規検知法の有用性を確立するため、植物細胞における細胞壁破壊の方法、色素等夾雑成分の除去について検討する。具体的には、凍結粉砕機の利用や固相精製などを試みる。
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