2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H07505
|
Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
前田 亜希子 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 講師 (40776423)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | EYS / RP / iPSC / 網膜色素変性 / 遺伝子検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
眼科診療、患者ケア向上と治療法開発を目指し、本邦に頻度が高く特異的であるEYS 変異c.4957_4958insAと c.8868C>A が網膜に及ぼす影響を臨床研究、また患者由来induced pluripotent stem cells (iPSC) からの立体網膜(3D 網膜)の分化誘導培養を用いた疾患モデリングを含めたcutting-edge 手法を用いた基礎研究により明らかにすることを目的としている。 目的を達成するため、臨床データ解析を含めた臨床研究、ヒトやサル検体を用いた基礎研究の以下1-5 を検討中である。(検討1).c.4957_4958insA と c.8868C>A 変異をもつRP 患者に特徴的な臨床所見がみられるか?(検討2).正常網膜、EYS 正常配列をもつ網膜におけるEYS の網膜内における発現、局在について(検討3).遺伝子変異によりEYS の網膜内における発現量、分布に変化が観察されるか?(検討4).EYS 変異を持つRP 患者由来iPSC から3D 網膜を分化誘導することによりRP の病態を再現可能か?(検討5).人為的にEYS 変異を正常細胞(embryonic stem cell: ES 細胞)に挿入し、改変ES 細胞を3D 網膜に分化誘導することによりRP の病態を再現可能か? 昨年の研究においては、症例の記録を解析することにより、EYS による網膜変性は定型網膜色素変性が多く、重症化する傾向があることが示唆され、網膜上膜などの合併が比較的多いことも示唆された。基礎研究からはサル網膜においてEYSたんぱく質が視細胞外節に発現することが確認された。さらに3名の患者さんにご協力いただき、本邦に頻度の高いc.4957_4958insA 変異を持つiPSCを樹立することが可能となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においての検討事項は以下の5つである。検討5についは予定よりも数ヶ月程度の遅れがあるが、他は順調に遂行されている。(検討1)遺伝子診断によりEYS 変異が検出されたRP 患者82 人を含むRP 患者の臨床所見をまとめる。(進捗)視力、視野、OCTなどの経過をまとめた。EYS 変異の症状特性として、定型網膜色素変性の重症に属する症例が多いこと、黄斑浮腫や網膜上膜などの合併症が多いことも示唆された。EYS 変異を持つ症例の前向きコホート研究を小規模ながら2年間の経過観察ということで開始している。網膜変性患者の遺伝子検査を進行中で楽年中に82名の検査を実施した。(検討2)正常網膜、EYS 正常配列をもつ網膜におけるEYS の網膜内における発現、局在について検討する。(進捗)ウサギにEYS ペプチドを免疫することにより抗体を作成した。この抗体を用いた免疫染色の結果、サル網膜においてEYSタンパク質が視細胞外節に発現していることを確認した。(検討3)遺伝子変異によりEYS の網膜内における発現量、分布に変化が観察されるか検討する。(進捗)検討4と検討5を参照。(検討4)c.4957_4958insA、c.8868C>A 変異を含むEYS 変異を持つRP 患者末梢血よりiPSC を樹立し、さらに3D 網膜を分化誘導し、その成熟過程を観察することによりRP の病態を再現可能か検討する。(進捗)c.4957_4958insA変異を持つ3名の患者よりiPSC を樹立を試みている。一人の方よりのiPSC はすでに樹立済みであり、他の2名の患者採血は終了し、iPSC を樹立中である。(検討5)CRISPR/Cas9 法により本邦に頻度が高く特異的であるEYS変異を挿入し、3D 網膜を分化誘導し、その成熟過程を観察する。(進捗)変異挿入のためのベクターの準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
検討1については平成29 年度も継続的にEYS 変異を持つRP 患者の臨床データをまとめる。 検討2、3についてはiPSCより分化した3D 網膜を分化後60 日(この頃に視細 胞が確認できる)、90 日、120 日(この頃に視細胞外節が確認できる)、150 日におけるEYS の発現量をqRT-PCRにて、EYS の網膜内局在を凍結切片を用いた免疫組織染色を行う。 検討4.EYS 変異を持つRP 患者由来細胞からRP の病態を再現可能か?についてはiPSC-3D 網膜の形態を分化後60 日、90 日、120 日、150 日において、機能を150 日において検討する。凍結切片を作製し、網膜構造、錐体および棹体視細胞数、視細胞外節の形態を免疫組織染色を用いて検討する。必要に応じ、電子顕微鏡を用いた解析を行なう。錐体視細胞染色:cone arrestin 抗体、M/L cone opsin 抗体、S cone opsin 抗体、 Peanut agglutinin lectin(PNA)生体染色など棹体視細胞染色:rhodopsin 抗体、recoverin 抗体などを用いた免疫染色を行う。さらにM cone opsin、L cone opsin 、S cone opsin、rhodopsin、recoverin の発現をqRT-PCR を用い定量することにより、網膜視細胞の分化成熟の様子を検討する。 検討5.人為的にEYS 特定変異を正常細胞に挿入することによりRP の病態を再現可能か?については夏ころまでにES 細胞や網膜疾患のない人由来のiPSCにCRISPR/Cas9 法により本邦に頻度が高く特異的であるc.4957_4958insA変異を挿入し、3D 網膜を分化誘導し、その分化、成熟の過程を観察する。
|