2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノチューブにおける電解質溶液の水輸送とイオン伝導の研究
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16J00042
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
植松 祐輝 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | イオン / 水 / 界面現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は帯電した固体と接する電解質溶液の表面付近での誘電率、粘性係数、イオンの吸着(表面効果と呼ぶ)が、電気泳動、キャパシタンス、表面張力、電気伝導にどのように影響するか、そして、表面の効果が支配的になるナノ流路において、どのような特異性が見られるのかについて研究を進めた。 電気泳動測定データを表面電荷密度に関して図示すると、表面効果によりベキ法則が存在することを理論的に見出した。これにより、表面付近の粘性係数を実験から見積もる方法を提案した。このベキ法則については 1 月に Chemical Physics Letters 誌に出版した。また、電位差が有限の時の金属やカーボン電極のキャパシタンスについて、私の理論と報告されている実験データを比較し、定量的に一致していること確かめた。理論にはまだ、恣意的に合わせたパラメータを含んでいるため、これらについて、分子動力学計算、量子化学計算などで、定量的に決めていくという課題が残っている。さらに電気泳動のベキ則について、従来使われていたスリップ境界条件よりも低粘度の表面層モデルの方が、疎水性表面の実験結果をよく説明することを明らかにした。普通の流動現象では両者に差異が見られないことが知られていおり、電気泳動特有の流動現象により、低粘度の表面層モデルが、より物理的特徴をつかんでいることを示した。 カーボンナノチューブ内の電解質溶液について、電気伝導度と電気浸透の実験データを、私のモデルを使って解析した。両者とも、少数のパラメータの調整のみで、理論と実験の一致を得ることができた。一方、水酸化物イオンのカーボンナノチューブへの吸着エネルギーが 10 万倍以上も、電気浸透と電気伝導で違っており、また量子化学計算による報告とも定性的に違うなど、新たな課題も残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
得られた成果は、電気泳動測定の実験データにベキ法則が成り立つことを発見し、その傾きから表面付近での電解質溶液の粘性係数を見積もる方法を提案できたことである。また、当研究課題の中心的な内容である、カーボンナノチューブ内の電解質溶液の電気伝導についても、期待通りの研究が進展している。また、その実験データを解析する過程で、ナノチューブ内の電気伝導に関する2種のベキ法則の成立条件の精密化に成功し、こちらも翌年度中に発表できる見通しのようである。以上の状況を鑑みて、研究課題の進捗について、期待以上の研究の進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノチューブ中の電解質溶液の界面動電現象について、既に結果は得られているので、できる限り早く、論文として出版する。また、表面張力に関する結果についても、論文にまとめる。 新しい課題として、金属と電解質溶液の界面の誘電物性、濡れ、粘性不均一性の問題がある。分子動力学計算で取り組む問題であるので、今年度中にプログラムを完成させ、解析を始める予定である。 また、これまで得られた成果を7月の国際学会で発表する予定である。
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Research Products
(6 results)