2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J00046
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
室賀 駿 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 近赤外分光法 / ハイパースペクトルイメージング / Kubelka-Munk理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は近赤外光の散乱に関する物理モデルの構築と、それを用いた高分子成形体の可視化について取り組んだ。高分子成形体は様々な形状で多様な用途で用いられており、その中でもさらなる高機能化に向けて粒子や繊維などの添加剤を分散させたコンポジット材料の研究開発が進んでいる。コンポジット材料中の添加剤の分散性は成形体物性に大きく影響を与えるため、添加剤の分散性の評価は必要不可欠である。一方で従来添加剤の大きさなどは電子顕微鏡を用いた観察が一般的であり、試料の破壊や遅い測定サイクルに由来する問題によって個々の成形体の添加剤分布の評価が困難であった。そこで下地を用いた近赤外分光(NIR)イメージング法によるコンポジット材料の評価法について提案した。コンポジット材料に反射率の異なる下地を置いてNIR測定を行うことで、下地の反射率に対する応答から試料の内部構造に由来する光の吸収・散乱の情報抽出を行った。Kubelka-Munk理論をベースとする光の物理モデルによってスペクトルを解析し、成形体の吸収係数及び散乱係数を算出した。提案法の妥当性をポリジメチルシロキサン(PDMS)/シリカコンポジットを用いて検証した。得られたシリカ粒子の吸収係数からと粒子濃度の間に線形性があり、Lambert-Beer則に従う濃度と吸収の関係があった。また粒径の異なるシリカ粒子から作製したコンポジットの評価を行い、NIRから得られる散乱係数がMie散乱理論に基づく散乱係数の理論値と一致していることが確認できた。このようにして通常の分光測定で得られる吸収係数だけでなく、提案法によって散乱係数を得ることで粒子の大きさの情報を可視化できるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は拡散反射測定のために積分球の購入を想定していたが、所属機関で拡散反射型NIRイメージング装置の使用が可能になったため積分球を購入しなかった。その分標準拡散反射板を購入することで手法の妥当性の検証が可能になり、本手法がコンポジット材料の評価に非常に有用であることを裏付けるデータを得ることができた。コンポジット中の添加剤の凝集体についての扱いについて依然課題は残されているものの、本手法の有効性が明らかになったためおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
PDMS/シリカ系で提案法の有効性の検証を行ってきたが、他にコンポジットに対する応用と検証について引き続き進めていく予定である。またシリカ粒子は球状であるため等方的な散乱挙動を示すが、繊維などの場合では挙動が異なる可能性がある。そのためガラス繊維などを用いたコンポジット材料の作製を行い、NIRイメージングで評価することでさらなる手法の拡張について取り組む。次にこれまでのモデル試料は厚さ方向に均一であったが、多層フィルムのように厚さ方向に成分の不均一性が存在する場合、層間の界面で生じる反射が無視できない可能性があるため、多層系への拡張についても検討したいと考えている。
|