2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J00069
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 真之輔 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ヌタウナギ / ヤツメウナギ / 円口類 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの脊椎動物は二対の体肢(前肢と後肢)をもつが,前肢と後肢は同じ進化過程で獲得されたとは限らない。基脚-中脚-末脚部は,前肢と後肢で比較的類似性が高いが,肢帯は肩帯と骨盤肢帯で異なる点が多い。本研究ではまず,円口類および軟骨魚類の総排出孔まわりの筋や腹鰭筋の発生機構を比較することにより,「骨盤肢帯は,脊椎動物の祖先動物が元来もっていた総排出孔括約筋の発生機構と関連して獲得された」のかどうかを検証する。筋前駆細胞の由来および神経支配の比較と同時に,有用膜類で後肢の発生に重要であるとされる遺伝子を中心に,円口類や軟骨魚類における遺伝子発現解析を行う。本研究では,脊椎動物の運動機能や複雑な生活環,社会行動に必須な形態の初期進化を明らかにすることを目的とした。 トラザメ胚を用いた筋前駆細胞の遊走に関わる遺伝子発現の解析,ヌタウナギの筋分化関連遺伝子の単離および遺伝子発現の解析,ヤツメウナギ幼生の培養および組織の観察,およびヌタウナギ胚のサンプリングを実施した。特に,ヤツメウナギ幼生の培養については,従来は実験室で得ることができなかったサイズのヤツメウナギ幼生を,ヤツメウナギ胚に給餌して培養することに成功した。これにより,後期胚から幼生の段階にかけて起こる形態形成を詳細に観察することが可能となった。観察の結果,体壁筋の背側,腹側の両端において筋前駆細胞が存在し,これらの細胞が将来正中鰭筋に分化すると考えられた。すなわち,この正中鰭筋の発生を詳細に観察することで,円口類ヤツメウナギにおいて体幹筋と異なる筋を形成する機構を知ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたトラザメ胚を用いた筋前駆細胞の遊走に必要な遺伝子発現の解析を行い,胚全体で筋前駆細胞の分布や移動のタイミングを観察することができた。その結果,正中鰭筋の前駆細胞にも対鰭筋と類似の発生機構が存在するという示唆を得た。また,ヌタウナギの胚を得ることにも成功し,遺伝子発現解析をさらに進める準備が整ったため,今年度はおおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,トラザメにおいては組織切片を作製して対鰭筋と正中鰭筋の発生機構を詳細に観察する。ヌタウナギについてはこれまでに得られたサンプルを活用して関連遺伝子のクローニング,および遺伝子発現解析を進める。
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