2016 Fiscal Year Annual Research Report
最高強度パルスミューオンビームで切り開く荷電レプトンフレーバー非保存の探索
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16J00188
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大石 航 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ミューオン / 粒子識別 / スローコントロール / 電磁カロリメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に行った研究・開発項目は以下の4つに分けられる。 (a)COMET実験における電子・ミューオン・パイオン間の粒子識別効率を、実験データとシミュレーションを用いて見積もった。COMET実験用検出器は電磁カロリメータ(ECAL)と飛跡検出器で構成されるが、ECALの各粒子に対する検出器応答は2015年度に測定されていた。その結果に飛跡検出器を加えたシミュレーション研究により、90%以上の識別効率を達成できることを示した。この成果は2016年度物理学会秋季大会にて発表した。 (b)COMETは最高強度を誇るJ―PARCの陽子ビームを用いるために多量の中性子線やガンマ線が生成する。放射線は半導体検出器や電子回路中のICを破壊するため、放射線量をシミュレーションから見積もった。見積もられた中性子線量に対して検出器が故障しないか、2016年7月と2017年1月に神戸大学のタンデム加速器を用いて試験した。10の12乗/平方cm の積分中性子流量に対して、一部のICを除いて安定動作することを確認した。 (c)制御監視(スローコントロール)装置の開発を開始した。高電圧モニター、温度モニター、LEDを用いた半導体デバイスの校正装置、ガス流量制御・モニター、真空系モニター、低電圧系分配器の計6つのプロトタイプ電子回路を自ら開発し、(d)の統合試験にてその動作を実証した。 (d)ECAL最終プロトタイプを製作し、別途用意した飛跡検出器の最終プロトタイプとあわせ、性能試験を2017年3月に東北大学電子光理学研究センターにて実施した。先述した制御装置や、開発中のデータ読み出し回路、トリガー回路も含めた統合システムを電子ビームを用いて性能試験した。全ての機器の要求通りの動作を確認できた。統合システムとしての検出器が完成したので、今後は実機製作に移る。この成果は第72回日本物理学会年次大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度始めに予定していた事項として、研究実績の概要の内(c)で述べたように、電磁カロリメータ(ECAL)の最終プロトタイプを製作した。それにともない数多くのスローコントロール装置のプロトタイプ製作も行った。ECALだけでなく、飛跡検出器の最終プロトタイプと合同で電子ビームを用いた最終試験を行うことができた。自ら開発したスローコントロールプロトタイプを含め、各々が問題なく動作することを確認し、十分な成果を示すことができた。 もう一方の目標である粒子識別手法の開発については、実験データとシミュレーションを用いてCOMET実験全体の粒子識別効率を見積もることができた。結果として、要求される十分な性能が得られる解析手法を考案することができた。 国際学会の場での口頭発表は行えなかったが、半年に一度は共同研究者との国際的なコラボレーション会議に参加し、口頭による研究成果報告を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度はまず28年度に行ったECAL性能試験で得られたデータの詳細な解析を行う。結果はCOMET実験用ECALの性能として論文にまとめ、投稿する。また28年度中に行った放射線損傷に関する研究についても、共同研究者との共著で論文投稿する予定である。 本来の予定では、新年度内にはCOMET実験の建設・コミッショニングに参加する予定だったが、実験グループ全体の研究状況により年度内の開始は見送られたため、方針を変更する。代替案として、これまでの研究成果をふまえたシミュレーション研究を行う。東北大学で行ったECALと飛跡検出器の実験により、各検出器の検出器応答を実際に測定・記録することができた。これらをCOMET実験のフルシミュレーションソフトウェアに実装することで、より現実性の高い実機応答を用いてシミュレーションデータを生成できる。そのデータを用いて実験の最適化を行い、最終的に到達可能な物理感度について、精度の高い見積もりを与える。結果は博士論文としてまとめる予定である。 また、これまでの研究成果をいくつかの国際学会で報告する予定である。
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[Journal Article] Development of an extremely thin-wall straw tracker operational in vacuum; The COMET straw tracker system2017
Author(s)
H. Nishiguchi, P. Evtoukhovitch, Y. Fujii, E. Hamada, S. Mihara, A. Moiseenko, K. Noguchi, K. Oishi, S. Tanaka, J. Tojo, Z. Tsamalaidze, N. Tsverava, K. Ueno, A. Volkov
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
Volume: 845
Pages: 269, 272
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] COMET実験のためのストロー飛跡検出器および電磁カロリメータの開発2017
Author(s)
大石航, 五十嵐洋一, 池野正弘, 上野一樹, 内田智久, 川越清以, 久野良孝, 斉藤貴士, 庄子正剛, 田中真伸, 東城順治, 中居勇樹, 西口創, 野口恭平, 濱田英太郎, 深尾祥紀, 藤井祐樹, 三原智, 山口博史, 吉岡瑞樹, Leonid Epshteyn, Dmitry Grigoriev, Myoung-Jae Lee, Yury Yudin, and the COMET Collaboration
Organizer
日本物理学会第72回年次大会
Place of Presentation
大阪府、豊中市、大阪大学
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] COMET実験のためのビーム測定における粒子識別性能の研究2016
Author(s)
大石航, 五十嵐洋一, 上野一樹, 川越清以, 久野良孝, 東城順治, 中居勇樹, 西口創, 野口恭平, 藤井祐樹, 三原智, 山口博史, 吉岡瑞樹, and the COMET Collaboration
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
宮崎県、宮崎市、宮崎大学
Year and Date
2016-09-21 – 2016-09-24