2016 Fiscal Year Annual Research Report
π共役高分子のらせん構造制御を基盤とする革新的スイッチングキラルマテリアルの創製
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16J00270
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石立 涼馬 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | キラリティ / キラル固定相 / 光学分割 / 不斉触媒 / ポリアセチレン / らせん記憶 / らせん構造 / らせん誘起 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究グループはこれまでに、動的軸性キラルなビフェニル基を側鎖に導入したポリ(ビフェニルイルアセチレン)(PBPA)誘導体が、光学活性ゲスト化合物のキラリティに応答して一方向巻きらせん構造を形成し(らせん誘起)、光学活性ゲストを除去した後も、そのらせん構造が記憶として保持されること(らせん記憶)を見出している。また、PBPA誘導体は官能基受容性が高く、動的ならせん構造の特徴を保持しつつ、様々な置換基を側鎖末端に導入できることを明らかにしている。以上の背景を踏まえ本研究では、アキラルなピリジンN-オキシド部位を側鎖末端に導入したPBPA誘導体を新規に合成し、生成ポリマーのらせん構造の制御および不斉触媒への応用について検討を行った。側鎖にピリジンN-オキシド部位を導入した新規アセチレンモノマー(1)は、出発原料に4-chlororesorcinolを用いた11段階の反応により合成した。ロジウム触媒を用いて1を重合することにより、側鎖末端に触媒活性部位を有するPBPA誘導体(poly-1)を合成した。重合は定量的に進行し、数平均分子量が20万程度のポリマーを高収率で得ることができた。次に、光学活性アルコール存在下、得られたpoly-1の円二色性(CD)スペクトル測定をトルエン中で行ったところ、ポリマー主鎖の共役二重結合領域に明確な誘起CDが観測された。また、メタノールを用いた再沈殿により光学活性アルコールを完全に除去した後も誘起CDの強度がほとんど変化しなかったことから、poly-1の主鎖に誘起された一方向巻きらせん構造は記憶として保持されることが分かった。さらに、一方向巻きらせん構造を記憶したpoly-1を触媒として用いて不斉アリル化反応を行ったところ、収率96% (6% ee)で生成物が得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、触媒活性を有するアキラルな置換基を側鎖に導入したポリ(ビフェニルイルアセチレン)(PBPA)誘導体を新たに合成し、NMRや円二色性(CD)測定等を駆使し、らせん構造の安定性や動的性質について詳細に調べるとともに、不斉触媒への応用が可能かを検討した。その結果、側鎖にピリジンN-オキシド部位を有するPBPA誘導体が、光学活性ゲスト化合物存在下で一方向巻きらせん構造を形成し、ゲストを除去した後も、そのらせん構造が記憶として保持されることを見出した。さらに、一方向巻きらせん構造を記憶した本ポリマーが、アルデヒド類の不斉アリル化触媒として機能することを明らかにした。また、この研究の過程で、側鎖の2,2’位にアセチル基を導入したPBPA誘導体においても一方向巻きらせん構造の誘起と記憶が可能であることを見出すとともに、本ポリマーを用いて調製したキラル固定相が、種々のラセミ体に対して優れた不斉識別能を発現することも明らかにした。この成果は、学術論文としてまとめ上げ、Chirality 誌に掲載された。以上のことから、期待通りの研究の進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、不斉選択性の向上を目的として、側鎖に導入する置換基や反応気質の構造、反応溶媒等の最適化を行う。さらに、本ポリマーは共存する化合物のキラリティに敏感に応答してらせん誘起されるため、不斉反応後に生成した光学活性化合物のキラリティにより、PBPA主鎖の片寄りが反応前より増幅することが予測される。従って最終的には、ごく僅かな不斉源から誘起したPBPA誘導体のらせんの片寄りが、不斉反応とらせん誘起・記憶を繰り返して増幅していき、段階的に生成物の光学純度が向上していく「自己増幅型高分子不斉触媒」の開発に挑戦する。
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Research Products
(8 results)