2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子情報を利用した材穿孔性寄生蜂の系統分類と寄主同定手法の開発
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16J00306
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 誠人 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 分類学 / 分子系統 / ヒメバチ / ミトコンドリアDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで分類が滞っていたSpilopteron属、Yezceryx属、Coleocentrus属について分類学的再検討が修了し、国内のケンオナガヒメバチ亜科の全ての属について概要が明らかとなった。申請者が研究を行うまでは9属17種が知られていたが、研究を行った結果、9属35種にまで増加した。この結果、日本のケンオナガヒメバチ亜科の多様性は世界の中でも非常に高く、重要な地域であることが示された。 また、日本に分布するケンオナガヒメバチ亜科の全属についてミトコンドリアDNA COI領域と核RNA 28S領域について分子情報を抽出し、Genbankに登録されている海外産の本亜科の3種を加えた計12属25種について分子系統解析を行った。その結果、多くの属では単系統性が支持されたが、種数を多く含むSpilopteron属とYezoceryx属では単系統性が支持されなかった。これは現在検索表で使われている形態形質が有用でない可能性を示しており、今後海外産の個体を含めた再検討が必要となることが示された。 8月に長野県においてツマグロケンヒメバチの採集を行った。得られた計20個体の産卵管をその場で切断し、99.5%エタノールに入れて保存した。その後研究室に持ち帰り、産卵管からDNAを抽出し、ハチ目では伸長が見られないカミキリ特異プライマー(平成26年度作成)を用いてPCRを行った。本プライマーにおいて一部のカミキリ目昆虫においてのみDNAの増幅がみられるのは既に確認済みである。産卵管が産卵のために寄主に刺されていれば寄主DNAの伸長が見られるはずであるが、今回は全ての個体において伸長が見られなかった。このため今後プライマー設計の見直しと人工的に産卵管を寄主に突き刺したコントロールを用意し、再度実験を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つの目標としていた日本産ケンオナガヒメバチ亜科の分類学的再検討が修了し、大きな進展があったと考える。また、産卵管からの寄主DNAの検出については概ねサンプル収集の目処が立ち、今年度からの大きな進展が見込まれるため。
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Strategy for Future Research Activity |
分類学的研究については全ての属の検討が修了したが、一部が論文化されていないため、速やかに論文化し、投稿を行う。 産卵管からの寄主DNAの検出については寄生者が出現する7月までに寄主特異プライマーを再度設計し直し、7-8月にかけてサンプリングを行った後、速やかに実験を行う。また、寄主・寄生者両者の塩基配列をGenbank等のデータベースへ登録を進める。
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Research Products
(3 results)