2016 Fiscal Year Annual Research Report
書字障害における運動と知覚の相互作用の解明,および基礎知見の臨床応用技術の開発
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16J00325
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
板口 典弘 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | リハビリ / 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動知覚と腕の筋活性・ 腕スティフネスとの関係を明らかにするため,まず,腕スティフネスを測定する機材開発をおこなった。具体的には,リニアモーターを用いた3自由度のロボットを用いて,3試行26方向からの摂動による腕スティフネス楕円体の算出をおこなった。ロボットはデスクトップサイズであり,従来の腕スティフネス測定に用いられてきたパラレルリンクを用いたマニュピランダムよりも小型で精度が高い仕様となっており,臨床現場への持込みが可能なサイズとなっている。安静時における腕スティフネス楕円体(5姿勢),および持続的に一定の力をかけている状態における腕スティフネス楕円体(4方向)を測定した結果,従来研究通りの腕スティフネスの特徴が再現され,さらに測定精度は従来研究の倍程度であった。 さらに,他動的な運動を知覚する課題をおこなうための予備実験をおこなった。具体的には,ペンタブレットを用いた到達運動の学習課題をおこない,自由度の拘束が運動学習に与える影響について検討した。その結果,運動時間の短縮には自由度拘束をおこなった条件が,運動精度の向上には自由度拘束をおこなわない条件がもっとも効果があることが明らかになった。一方で,機械的な拘束をせず,運動時間に関するふたつのタイプの拘束条件が運動学習と速度・精度トレードオフに与える影響も検討した。その結果,特定の運動時間で練習をおこなう条件では,運動精度が減少していったのに対して,できるだけ速く運動をおこなうことを目指した場合には,運動精度は減少しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究遂行途中に受け入れ研究室の変更があり,その分の環境整備,特にロボットを使用する計画についての遅れが見られた。しかしながら,ロボットを使わない状況において,水平面における経日的な書字運動学習と速度・精度トレードオフに関する研究知見がまとまり,現在執筆中である。また,スティフネス楕円体の計測に関しては,計画通り,臨床現場においてに実施しやすい実験手順や解決すべき問題点,さらには近似に十分な外乱・試行数・摂動方向を決定することができた。そのため,当初の計画とは多少のずれがあるものの,十分な進展があったものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度の研究知見を基盤としてロボットによる他動的な書字運動の研究を効率的に進めることができる。特に,いままでの研究は,速度の局所最小点を運動のなめらかさの指標としていたが,トレードオフの観点から検討した結果,局所最小点の3次元的位置は学習に従ってある場所へ収束していく傾向が見られた。来年度の研究では。この知見をさらに発展させ,運動プリミティブとの一致・相違に関する検討をおこなっていく。また,ロボット開発については,現在のロボットの測定時間の減少,使用感の向上をおこなっていく。
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Research Products
(4 results)