2017 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスライスX線タイコグラフィによる広視野・高分解能・三次元バイオイメージング
Project/Area Number |
16J00329
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下村 啓 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | X線顕微鏡 / タイコグラフィ / コヒーレントX線光学 / 位相回復 / 3次元再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、観察領域100x100x100um3、空間分解能10x10x10nm3での3次元観察を可能にするマルチスライスX線タイコグラフィの実現を目標としている。本年度は、以下の2点を中心に研究を進め、成果を得た。 (1) プリセッションマルチスライスX線タイコグラフィによる多層配線の観察 マルチスライスX線タイコグラフィは、試料中での波動場の広がりから光軸垂直方向の試料断面像を取得することができ、新たな3次元イメージング法としての可能性を秘めている。しかし、1方向の測定のみでは光軸方向の分解能が面内方向と比較して4桁程度下回っており、これまでにマルチスライスX線タイコグラフィとプリセッション測定を組みわせることで光軸方向の分解能の向上が可能であることを実証してきた。本手法をTEG基盤が積層された多層配線に適用したところ、1.4um間隔で積層された各層を観察することに成功した。また、それらを重ね合わせた像から配線ズレを10nm以下の分解能で観察することに成功した。 (2) 逐次近似法を応用したマルチスライス3次元再構成アルゴリズムの開発及び実証 通常のCTで利用されている3次元再構成計算では各角度で測定した投影像を利用するが、マルチスライスX線タイコグラフィでは分割した複数の層の試料像が再構成されるため、これらを利用した3次元再構成を行うことでより少ない測定試料角度で3次元観察が可能になると期待される。そこで、逐次近似法を応用した3次元マルチスライス位相回復計算法を開発し、計算機シミュレーションによる本手法の有用性を実証した。また、SPring-8においてIntel CPUのタイコグラフィ測定を21の試料角度で行い、新たに開発した位相回復計算を実行したところ100 nm間隔で配置された複数の多層配線の微細構造を可視化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチスライスX線タイコグラフィで対象にしている10um以上の厚さの試料の高分解能3次元観察を実現するためには1000以上の入射X線角度でのタイコグラフィ測定が必要であり、実用的な測定時間内で3次元観察を実現するためには、測定スループットの向上だけでなく、そもそも3次元再構成に必要なタイコグラフィ測定数を低減させることが求められる。今年度は逐次近似法とマルチスライス位相回復計算を組み合わせた新たな3次元再構成アルゴリズムの開発により、より少ない測定数で3次元観察が可能になることを実証しており、マルチスライスX線タイコグラフィによる高分解能3次元観察に向けて着実に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発してきた測定光学系、3次元再構成アルゴリズムを駆使して生体試料の高分解能3次元観察に着手する。具体的には、まず比較的取扱いが容易なゴム試料を用いて、3次元測定に必要な円柱状試料の作製プロセス、3次元測定方法を確立する。その後、同様の手順でマウスの大脳皮質の高分解能3次元観察の実現を目指す。
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