2016 Fiscal Year Annual Research Report
ラットのストレスレジリエンスの個体差における神経ペプチドYの関与
Project/Area Number |
16J00338
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上野 将玄 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | レジリエンス / ストレス / 個体差 / 恐怖条件づけ / 消去 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスからの回復力(レジリエンス)は明確な個体差が存在する。しかし、その個体差を生み出すメカニズムは未だ不明瞭である。本研究は、ラットの行動実験ならびに行動薬理学的検討を通して、ストレスレジリエンスの個体差をもたらすメカニズムの解明を目指すものである。恐怖条件づけの消去をレジリエンスの行動指標として扱い、消去成績によって群分けすることで、ラットにおけるレジリエンスの行動学的個体差を捉えている。これまでの実験結果より、その個体差は高い再現性をもって明確に検出可能であると示されている。ストレスに暴露されたヒトの研究から、神経ペプチドY(NPY)がレジリエンスの個体差に寄与する可能性を指摘されている。また恐怖条件づけの消去において、扁桃体基底外側核(BLA)は中心的な役割を担っているとされる。 本研究は、ストレスへの脆弱性に焦点を当てた従来の研究に対して、回復力や強靭性という別方向からストレス関連性疾患に関する治療や予防を模索するものである。強いストレスに暴露されても病気にならない人々は一定数存在する。本研究は、なぜその人々は病気にならないのか、病気になってしまう人々と何が異なるのか、動物実験を用いてそのメカニズムを検討するものである。 本年度は、恐怖消去の中枢であるBLAを標的として、レジリエンスを向上させうると示唆されているNPYを局所投与することで、条件性恐怖の消去(≒レジリエンス)の個体差に及ぼす影響を検討した。BLAにガイドカニューレ埋め込み手術を行い、消去試行4日目から、消去の30分前にNPYを局所投与した。実験後、消去成績に基づき、ラットをレジリエント群と脆弱群に分けた。結果、NPY脳内局所投与した日から脆弱群の恐怖反応はレジリエント群と同等まで低下する傾向がみられた。この結果は、NPYによって脆弱な個体のレジリエンスを向上させられる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳内局所投与のためのカニューレ埋め込み手術に関連して、実験前にカニューレが破損した個体や、カニューレが標的部位に適切に刺入していなかった個体を分析から除外した結果、薬物投与実験において被験体数を十分に集めることができなかった。また扁桃体基底外側核は脳の外側部に位置する脳部位であるため、頭蓋骨に埋め込むにあたり皮膚を大きく広げる必要があり、ラットがカニューレ埋め込み部を引っ掻くことで、カニューレが破損することが実験者の予想よりも多かった。これらにより平成28年度に実施予定であった扁桃体内への薬物局所投与実験は予定よりも遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、NPY投与実験を引き続き実施しながら、前述の結果を踏まえ、次年度以降の研究計画を検討するとともに、前頭前皮質への脳内投与について実験を進めていく予定である。これは、レジリエンス神経回路という研究の目的について、現在実施している予備的検討の結果から計画していた前頭前皮質と扁桃体のみならず、海馬や中隔までを含むより大きな枠組みで捉えることが可能であると予測できるためである。
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Research Products
(6 results)