2016 Fiscal Year Annual Research Report
波源推定の不確実性が沿岸域の津波挙動に及ぼす影響に関する研究
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16J00394
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山中 悠資 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 津波計算手法 / 津波の分裂 / 山体崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
想定津波波源の不確実性が沿岸域の津波挙動に及ぼす影響を分析するためには,様々な津波を想定して津波計算を実施する必要がある.しかし,膨大な数の津波計算を実施することになるため,従来の計算手法では計算全体に要する時間が非常に長くなる.そこで本研究では,予め計算した津波波形のデータベースに基づき,任意地点における任意津波の波形を高速に計算できる計算手法を用いて分析を行う.一方で,その手法を用いて水深が浅い地点における津波波形を計算したとき,津波の特性や地形条件に応じて計算波形の誤差が大きくなる.つまり,津波や地形特性に応じて,水深が浅い領域での津波波形の推定精度は低下する.そこで,水深が浅い領域での津波波形の推定精度とその手法の適用限界について分析した.さらに,上述の計算手法は津波の氾濫を計算できないため,それを小さな負荷で計算できる計算手法を新たに構築した. 過去に日本海域で発生した特徴的な津波として1983年日本海中部地震津波と1741年渡島大島津波が上げられる.日本海中部地震津波では,津波の分裂現象により発生したその分裂波が沿岸域の被害拡大に寄与したことが報告されている.また,渡島大島津波は山体崩壊により発生した津波であり,この津波により沿岸域で数千人規模の被害が生じている.したがって,日本海域で発生する津波の挙動を分析するうえでは,このような過去に発生した現象も含めて分析することが必要である.そこで,津波の分裂現象と山体崩壊に伴う津波に着目した数値計算を行い,津波の分裂現象の発生条件や,山体崩壊と形成される津波高の関係についての詳細な分析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,計算負荷の低減を図るため,本年度は計算負荷の小さい計算手法の構築やその精度検証を行う計画であった.まず沖合の津波波形の計算に対しては,予め計算した津波波形のデータベースを用いた計算手法を適用するため,その計算手法の精度や適用限界についての分析を行った.またその計算手法は津波の氾濫を計算できないため,津波の氾濫を高速に計算できる計算手法を構築し,2011年東北津波の氾濫域を対象にその推定精度の分析を行った.このように,本年度は計画当初の内容に沿って順調に研究を実施することができた. さらに,日本海域で過去に発生した津波の分裂現象や山体崩壊に伴う津波に着目して数値計算を実施した.これらの分析を通して得られた知見も踏まえ,想定される日本海津波の不確実性が沿岸域の津波挙動に及ぼす影響及び津波挙動の具体的な推定を,次年度以降により詳細に分析する. 以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
計算負荷が小さい津波計算手法を用いながら,日本海津波想定の不確実性の影響を具体的に分析する.日本海域では将来的に起こりうる津波が多数想定されているため,まずそれらの中から不確実性の影響がより大きい想定津波波源を特定する.次に,その想定津波波源による沿岸被害が大きくなると予想される地域を抽出し,それらの地域を対象にその不確実性の影響を評価する.地域ごとに来襲津波高や最大津波高,浸水面積,来襲時間などに着目しながらその影響を具体的に評価するとともに,海岸堤防などの対津波構造物の設置や嵩上げなどによって,沿岸被害をどの程度減少させられるかについても検討する.これらの分析を通して,想定を上回るような被害発生の可能性が示唆された場合には,その対策についても併せて検討する.
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Research Products
(3 results)