2016 Fiscal Year Annual Research Report
結晶基底を用いた Newton-Okounkov 凸体の研究
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16J00420
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤田 直樹 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | Newton-Okounkov凸体 / シューベルト多様体 / 結晶基底 / ストリング多面体 / 結晶基底の多面体表示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はNewton-Okounkov凸体(ここではNOBYと省略する)と結晶基底の関係を理解し,幾何への応用を与えることである.Kavehはシューベルト多様体のある付値に関するNOBYが結晶基底から作られるストリング多面体と一致していることを見出した.また報告者は昨年度に受入研究者である内藤聡教授と行った共同研究においてKavehのものとは異なる付値を考察し,対応するNOBYが中島-Zelevinskyによる結晶基底の多面体表示と一致していることを証明した.今年度はこれらの研究をさらに発展させて様々な付値に関するNOBYを記述することを目指し,次の二つの結果を得た. まず報告者は東京大学の大矢浩徳氏との共同研究において,上記の付値たちがどちらもより幾何学的に定義される異なる種類の付値たちと一致していることを証明した.この結果は本研究と幾何との間に密接な関係があることの更なる保証を与えるものである. 次に報告者はfoldingと呼ばれる異なる種類のリー代数の間の関係に着目し,その関係が対応するシューベルト多様体のNOBYにどのように反映されているのかについて具体的な記述を与えた. カナダのフィールズ研究所で開かれた国際研究プログラムに約3ヶ月間参加し,McMaster大学のHarada教授をはじめとする海外の様々な研究者と研究交流を行った.この研究プログラムをきっかけとする海外の研究者たちとの共同研究では,次数3のdel Pezzo曲面について考察し,トロピカル・グラスマン多様体とNaruki扇という自然に現れる二つのトロピカルモデルがどちらもこの曲面のKhovanskii基底を分類するためには不十分であることを証明した. 昨年度取り組んだ結晶基底の多面体表示に関する研究をまとめた論文は Mathematische Zeitschrift誌から出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標であった異なる付値に関するNewton-Okounkov凸体の間の関係を与えるという研究は,十分に一般的な形で完成させることができた.またこの研究で用いた議論を発展させることで,foldingという異なる種類のリー代数の間の関係が対応するシューベルト多様体のNewton-Okounkov凸体にどのように反映されているのかについて理解することができた.これによりnon-simply-lacedの場合における凸体の計算がsimply-lacedの場合に帰着されることになり,今後の研究における具体的な計算への応用が期待できる. さらにカナダのフィールズ研究所で開かれた国際研究プログラムに約3ヶ月間参加し,Harada教授をはじめとする海外の様々な研究者と研究交流を行った.それにより次年度以降の研究で必要な幾何学的視点および考え方を身に付けることができた.この研究プログラムへの参加をきっかけとするMartha Bernal氏,Daniel Corey氏,Maria Donten-Bury氏,およびGeorg Merz氏との共同研究は本研究に新たな方向性を与えるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
Kiritchenkoにより導入された多面体に対する差分作用素を用いてシューベルト多様体のNewton-Okounkov凸体を記述することを目指す.報告者は既に結晶基底の多面体表示の多くがこの差分作用素の言葉で記述できることを確かめている.次年度の前半ではこの記述がより一般の多面体表示まで拡張できるかどうかを考察する.この差分作用素により記述される多面体の頂点や面は良い性質を持っているため,結晶基底の多面体表示の多面体としての構造について新しい理解が得られると考えている. フィールズ研究所で開かれた国際研究プログラムを通して得た重要な考察は,本研究がシューベルト計算というシューベルト多様体の幾何に関わる理論と相性が良いということである.次年度の後半では本研究の幾何への応用を目指し差分作用素の言葉で記述される結晶基底の多面体表示とシューベルト計算の理論との関係を模索する.まずは多面体表示の特別な場合であるGelfand-Zetlin多面体とシューベルト計算の理論を関連付けたKiritchenko-Smirnov-Timorinの研究を結晶基底の立場から理解する.この研究ではKogan面と呼ばれる特別な種類の面が本質的な役割を果たしている.そのため前半の研究で行う多面体表示の頂点および面に関する考察が重要になると考えている.
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Research Products
(10 results)