2016 Fiscal Year Annual Research Report
CCR5阻害能を有するHomophymine Bの全合成とその新規評価法の開発
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16J00465
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
東海林 由憲 山形大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | CCR5阻害剤 / 異常アミノ酸 / 不斉合成 / Homophymine B / Callipeltin A / BCCN |
Outline of Annual Research Achievements |
HIVウイルスはヒト免疫細胞上に存在する膜タンパク質CCR5を第二受容体にし、細胞内に侵入、感染することが知られている。そこで新たなCCR5阻害剤の創製を目指し、2009年にZampellaらによって単離された環状ペプチド Homophymine B の全合成研究に着手した。 本年度は研究計画に従い Homophymine 類に含まれる異常アミノ酸の合成を中心に研究を行った。まず側鎖脂肪酸誘導体の合成を検討した。リパーゼを用いた非対称化反応によって光学活性なアルコールを入手し、ロッシュクロチル化反応などを用いることで連続する不斉点を構築した。続いてWittig 反応を含む数工程の変換を経て脂肪酸誘導体の合成を達成した。本合成方法は類縁体合成への展開を考慮したもので、構造活性相関研究に効果を発揮するものと考えられる。次にFmoc-メチルグルタミンの合成に着手した。Soloshonokと浜理薬品株式会社の共同研究によって開発されたBCCNを活用した合成法を検討した。その結果、わずか6工程で導くことに成功した。本成果は今後様々な合成に適用されるものと思われる。 さらに、同じくCCR5阻害能を示すカリペルチン 類を構成する異常アミノ酸であるAGDHEの合成を行なった。まず、グルタミン酸を主発原料に既知の方法を用いて側鎖カルボン酸のみを還元した。続いて、Z選択的ホーナー・エモンズ反応、オスミウムを触媒としたジヒドロキシル化により骨格を得、最後に光延反応によりグアニジノ基を導入することでAGDHEの合成を達成した。 また、新たなFmoc化試薬の開発も行なった。Fmoc化試薬として用いられるFmoc-OSuは副生成物であるβ-Alaを発生させることがあった。そこでその副生を抑制する試薬としてFmoc-OPhthを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定ではL-アスコルビン酸よりHomphymine 類を構成する異常アミノ酸であるdimethyl glutamine を合成する計画であったが、望む立体化学を有する化合物が得られなかったため、計画を変更せざるを得なかった。そのために、研究の進捗状況にやや遅れが生じている。 具体的には、まずL-アスコルビン酸を既知の方法を用いて変換した。次にジアステレオ選択的なマイケル付加反応、強塩基を用いたカルボニルα位のアルキル化を行なった。マイケル付加反応は望む立体化学の化合物を単一のジアステレオマーとして与えたが、α位のアルキル化反応においては望む立体化学とは反対のepi体が優先的に得られてしまう結果となった。この点において様々条件検討を行なったが、望む化合物を選択的に得ることはできなかった。そのため本L-アスコルビン酸を用いたルートでは大量合成は不可能だと判断し、新たな合成計画を立案するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した異常アミノ酸を用いて固相合成に着手し、環状ペプチド類の全合成を目指す。これまでにHomophymine B の環状部の固相合成を達成しているため、その際と同じ戦略で全合成を行う予定である。具体的にはD-アスパラギン酸より固相合成を行い、N末端である脂肪酸誘導体(HTH)まで順次アミノ酸をカップリングしていく。次に、AHDH残基の側鎖水酸基にFmoc-ホモプロリンを縮合することでエステル結合を形成する。その後、ピペリジンによるFmoc基の脱保護と樹脂からの切り出しを行う。最後にD-アスパラギン酸とホモプロリンとの間で環化、最終脱保護により全合成を目指す。それぞれの工程(縮合、環化、脱保護)において、条件の最適化をはかる。同様に本天然物の数種のアナログ体についても合成を検討する。合成した天然物、並びに誘導体についてHeLa細胞を用いたMTTアッセイにより細胞毒性の調査も行う予定である。
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Research Products
(5 results)