2017 Fiscal Year Annual Research Report
日本における精神病床入院メカニズムの実証研究―3類型化の視点から―
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16J00469
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
後藤 基行 慶應義塾大学, 経済学部, 特別研究員(PD) (70722396)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 精神病床入院 / 医療扶助 / 生活保護 / 長期在院 / 同意入院 / 措置入院 / 精神障害者実態調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の主目的は、戦後日本に生じた急激かつ大規模な精神病床増・入院増の原因を検証することである。 当該年度の進展として、厚生省が1956年に実施した「在院精神障害者実態調査」の個票を用いた研究を行った。本研究では、精神病床における長期在院の歴史的・制度的背景を探るために、史料的価値の高い個票を用いて長期在院と入院医療費支払区分との関連を分析した。とりわけ生活保護法での医療扶助入院が、社会保険での入院よりも長期在院化と強い関連があるか否かを検証した。 方法として、医療費支払区分と在院期間の関係を検証するために多重回帰分析による検証を行った。結果としては、最も多くの交絡要因をコントロールした場合、生活保護法による医療扶助入院は、社会保険入院と比べて、統合失調症では11か月、そう鬱病では9か月、てんかんでは17か月在院期間が長くなっていた。また標準誤差は大きいものの,医療扶助入院と在院期間の関連は,保護者が親,配偶者,兄弟である場合に強いことも示唆された. 新生活保護法の施行後まもない1956年という時点において、患者の家族・個人属性などの要因を制御しても、すでに医療扶助入院患者は社会保険入院患者と比較して長期在院となりやすい傾向があった。医療扶助入院は、退院先の家庭の生活困窮度や低いケア力といった家庭的背景と、同意入院の仕組や自己負担がかからないといった制度的背景があったと推察される。このような医療扶助入院における入院長期化は現在に至るまで存在し、戦後の精神病床入院の一貫した特徴の1つであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、当該年度中に厚生省による精神障害者実態調査の研究を行い論文投稿を企画していたが、論文完成がずれ込んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度においては、精神障害者実態調査に関わる研究を進展させ、論文投稿までを完遂する。
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Research Products
(1 results)