2016 Fiscal Year Annual Research Report
偏光ラマン分光法を用いた結晶性高分子材料のその場3次元配向評価
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16J00528
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木田 拓充 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 分子配向 / 結晶性高分子 / 一軸変形 / 3次元配向評価 / 高分子材料物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存のラマン分光装置に対して、新たにZポラライザーを組み込むことで、xyzの各軸方向に偏光した入射光を作り出し、分子配向状態の3次元的な評価を行った。本研究ではz軸方向(試料深さ方向)の偏光状態が重要であり、ラマンテンソルが既知な石英試料の偏光ラマンスペクトルを測定することで、z軸方向に対する偏光状態が正しく生成されていることを確認した。加えて、ポリエチレンにおけるラマンテンソル解析を行い、配向関数を算出する連立式を3次元に拡張することに成功した。試料には一軸延伸した高密度ポリエチレンおよび圧延操作によって二軸配向状態となっている低密度ポリエチレン試料を用いた。上述した3次元配向評価法を適用することによって5種類の配向関数を算出し、分子配向状態を3次元で評価することに成功した。その結果、一軸延伸した試料は、分子鎖の配向分布が延伸軸回りで対称となっているが、圧延試料は深さ方向に配向した分子鎖がほとんど存在しておらず、面内配向状態であることがわかった。 分子量が異なる高密度ポリエチレン試料を用いて、一軸延伸過程におけるその場ラマン分光測定を行うことで、分子配向挙動をリアルタイムで評価した。延伸初期段階における分子配向挙動は分子量にほとんど依存しないことがわかった。試料を高ひずみ領域まで延伸し、試験片の不均一変形が開始すると、分子量が低い試料ほど分子鎖が延伸方向へと高度に配向することが明らかになった。小角X線散乱測定を行ったところ、分子量が低い試料ほど長周期や結晶厚が小さくなっており、低分子量の試料は結晶構造が小さいことから、延伸方向へと高度に配向したと考えられる。以上より、分子量が分子配向状態に与える影響を構造の観点から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、3次元配向評価法を確立し、異なる変形を与えた試料の分子配向状態を3次元で評価することに成功した。また、分子量などの構造パラメータが分子配向挙動に与える影響を構造論的に解明することができたため、本研究課題がおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元配向評価装置に小型引張試験機を組み込むことで、一軸延伸過程におけるその場3次元配向評価を行う。また、分子量や分子量分布が異なる試料を用いて、一次構造が分子配向挙動に与える影響について検討する。
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Research Products
(8 results)