2016 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル有効理論に基づく核反応・核構造の統一的記述
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16J00630
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
豊川 将一 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 原子核反応 / 有効相互作用 / 畳込み模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
核反応の微視的記述において、核力に基づいた原子核間の光学ポテンシャルの構築が重要な役割を果たす。微視的光学ポテンシャルは核子間有効相互作用を原子核密度で畳み込む「畳込み模型」によって構築できる。畳込み模型では有効相互作用として、Brueckner-Hartree-Fock(BHF)法により核力から導出されるg行列有効相互作用(g行列)が広く用いられている。本研究では、カイラル有効理論(Ch-EFT)から決定された2核子力と3核子力にBHF法を適用することで、新たなg行列の構築と核反応における3核子力効果の分析を行った。 BHF法により導出されるg行列は非局所性を持ち、数値的に求まるため、畳込み模型に直接適用することは容易でない。そのため求まった非局所g行列と等価な性質を持つ局所g行列の構築が必要となる。その際、光学ポテンシャルに重要な寄与を持つエネルギー殻上の近傍におけるg行列の性質に着目することで、精度良く局所g行列が構築できることを確かめた。 今年度は、Ch-EFTの核力を用いたBHF法によるg行列の計算を広範囲のエネルギー領域で実行し、求まった非局所g行列から局所g行列を構築した。そして新たに構築した局所g行列を畳込み模型に適用することにより、核子-原子核弾性散乱および3He, 4He-原子核弾性散乱を系統的に解析した。Ch-EFTの核力に基づく局所g行列を用いた解析で、調整パラメータを導入することなく断面積や偏極分解能などの実験データを再現することに成功した。また、Ch-EFTの3核子力がこれらの散乱を記述する光学ポテンシャルに対して斥力的かつ吸収的な効果を与えることを明らかにし、特に3He,4He-原子核弾性散乱においては3核子力効果により断面積が角度分布の後方で小さくなることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ch-EFTの2核子力+3核子力から構築したg行列が弾性散乱を良く記述したことは、このg行列の信頼性が高いことを示している。g行列から導出される光学ポテンシャルは非弾性散乱などの反応過程の解析にも適用可能であり、本研究で構築したg行列は今後様々な核反応に応用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
核構造に対しても、BHF法によりCh-EFTの核力から有効相互作用が導出可能である。この有効相互作用はHartree-Fock法などの平均場理論による核構造解析に用いられるが、この場合においても局所化が必要となる。今後は、これまでの研究で行ってきた非局所g行列の局所化の手法を足がかりに、非局所有効相互作用に対する局所解析関数化の手法を確立する。そして構築した局所有効相互作用を用いて核構造計算を行うことで原子核密度を求め、核反応解析を合わせて実行していく予定である。
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