2016 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal and application of new microbial culture method focused on the headspace conditions of shake-flask
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16J00800
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 将人 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 振盪フラスコ培養 / 二酸化炭素 / 酸素 / 集積培養 / 純粋培養 / モニタリング / サンプリング / 二酸化炭素換気能 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、微生物の振盪培養中のフラスコ内の気相部のガス成分の変化が、培養微生物群集や単一菌株に及ぼす影響はほとんど研究されておらず、未解明である。平成28年度は、申請者が発見した新奇な現象(振盪フラスコ培養中の間欠的な気相環境への操作が集積される培養微生物群集に影響を及ぼす)を研究対象に、課題1.【新奇な現象のメカニズムの解析】、課題2.【単一菌を用いた振盪フラスコ培養法の解析】、について検討を行った。 既存の測定システムでは振盪培養中の培養栓付きのフラスコ内の気相部と培養液中の培養因子を詳細に把握できないため、Circulation Direct Monitoring and Sampling System(CDMSS)を開発し課題解決に取り組み、以下の点を明らかにした。 ≪課題1.に対して≫ 環境試料の振盪フラスコ培養中の間欠的で無菌的な培養栓の開封(30 sec)は集積される培養微生物群集に影響を及ぼす、という新奇な現象は、一時的なフラスコ気相部の二酸化炭素濃度の減少により培養液中の溶存二酸化炭素が低下して生じることが示唆された。 ≪課題2.に対して≫ 振盪フラスコ培養中、気相部に二酸化炭素の濃度分布が形成される期間が存在することが示唆された。また、種々の形状のフラスコの酸素供給能や二酸化炭素換気能を測定し、選定したフラスコ条件での大腸菌の振盪培養中の様々な培養因子を測定、比較した結果、フラスコの形状により酸素供給能や二酸化炭素換気能は大きく異なり、二酸化炭素換気能は大腸菌の増殖に影響を与えることが示唆された。さらに、振盪培養において、フラスコ気相部の二酸化炭素を吸収し除去することで、従来の振盪フラスコ培養法と比べて大腸菌の増殖量が増加した。 以上より、振盪培養中のフラスコの気相環境が微生物に及ぼす影響は二酸化炭素が大きく寄与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に開発したCirculation Direct Monitoring and Sampling System(CDMSS) が完成し、多くの成果が得られている。また、CDMSSのモニタリング技術を活かし、平成29年度に実施予定である課題3.【Automatic Aeration Flask System(AAFS)】の改良の予備実験も順調に進行している。一方、学術雑誌への投稿はやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
振盪フラスコ培養法は、微生物の好気的培養による二次代謝産物の探索や培地の最適化に用いられている。酸素供給能に関しては、振盪条件やフラスコ条件が検討されてきたが、二酸化炭素換気能に関しては十分に検討されていない。平成28年度は、(A)環境試料の振盪培養中に、フラスコ気相部に充満した二酸化炭素を一時的に換気することで培養微生物群集が変化すること、(B)大腸菌の純粋培養中に、フラスコ気相部に充満する二酸化炭素を連続的に吸着除去することで増殖が改善されること、を明らかにした。平成29年度は以下の課題に取り組む。 ≪課題1.【新奇な現象のメカニズムの解析】のより詳細な分析≫ 平成28年度に、培養栓の開封やフラスコ気相部への通気によりフラスコ気相部の二酸化炭素濃度が変化することで、新奇な現象が生じることを明らかにした。平成29年度は、実際に優先化する培養微生物群集の詳細な解析を行う。また、新奇な現象を見出した最初の操作は、培養栓の開封を含めたサンプリング操作であった。そこで、平成28年度に開発したCDMSSを用いて、培養栓の開封がフラスコ気相部の二酸化炭素濃度に及ぼす影響を解析する。サンプリング操作は、振盪フラスコ培養法が開発され80年以上経過しているが全く変化することなく広く国内外で使用されている。そのため、本研究により、汎用性の高い成果が期待できる。 ≪新規振盪培養フラスコと課題3.【AAFSの改良】を含めたシステムの提案≫ これまで得られた知見を結集し、従来の振盪フラスコ培養法では設定できなかった培養環境を、従来法の利便性を損なうことなく作成する。具体的には、二酸化炭素換気能が高く、培養液の揮発を最小限に抑えたフラスコと、フラスコ気相部の二酸化炭素濃度制御システムを開発する。また、提案した手法を用いて有用な培養微生物群集の取得や新規有用物質生産が可能な培養条件を確立する。
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Research Products
(5 results)