2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J00832
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中野 正隆 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | RNA編集 / microRNA / 薬物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉酸代謝の鍵となる酵素であり、癌化学療法剤メトトレキサートの標的分子として知られているジヒドロ葉酸還元酵素 (dihydrofolate reductase, DHFR) の発現がA-to-I RNA編集によって制御されているか検討した。ヒト乳がん由来細胞株において、DHFR 3'非翻訳領域上に26個のRNA編集サイトが存在することを見出した。RNA編集酵素ADAR1ノックダウンによりDHFR 3'非翻訳領域上のRNA編集レベルの低下とそれに伴うDHFR mRNAおよびタンパク質発現量の低下が認められたことから、DHFR発現はADAR1によるRNA編集によって正に制御されることが示された。インタクトな細胞では、DHFR mRNAはRNA編集によってmiR-25-3pとmiR-125a-3pによる発現抑制を回避するが、ADAR1をノックダウンするとRNA編集レベルの低下に伴いこれらのmiRNAsの認識配列が形成され、発現抑制を受けることを明らかにした。このRNA編集によるDHFRの発現制御機構は、乳がん細胞の増殖やメトトレキサートに対する感受性に影響を及ぼした。ADAR1発現量およびDHFR 3'-UTR上のRNA編集レベルは正常組織より乳がん組織において高いことを明らかにし、乳がん組織におけるRNA編集の亢進がDHFRの高発現につながる可能性を示した。以上より、DHFR発現制御においてRNA編集が重要な役割を有することを明らかにし、癌の進行や抗がん剤に対する耐性化メカニズムに対して新たな知見を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RNA編集がヒト乳がん細胞におけるジヒドロ葉酸還元酵素の発現を正に制御することを明らかにし、国際学術雑誌Journal of Biological Chemistryに発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA編集がヒト肝臓における薬物代謝能に影響を与えているか明らかにするために、ヒト肝由来細胞を用いて、ADARをノックダウンまたは過剰発現した時のCYPやグルクロン酸転移酵素の酵素活性評価を行う。加えて、RNA編集による薬物代謝関連遺伝子発現制御メカニズムの解明に向けて、RNA編集による翻訳タンパク質のアミノ酸置換やスプライシング異常、microRNAによる発現制御の変化に着目した検討を行う。
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Research Products
(4 results)