2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J00852
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石川 浩史 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子量補償 / タンパク質複合体 / ユビキチン-プロテアソーム系 / 酵母 / リボソームプロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内におけるタンパク質の発現量は,転写や翻訳の速度,および,mRNAやタンパク質の分解速度の調節によって最適化されていると考えられている。しかし,遺伝子発現系が摂動を受けた時にタンパク質の発現量がどのように調整されるのかについては,ほとんど解明されていない。例えば,出芽酵母の少数の遺伝子では,そのコピー数の増加に伴いmRNA発現量は増加するもののタンパク質発現量の増加にはそのまま結びつかないことが知られているが,その機構の解明には至っていない。本研究は,タンパク質レベルの遺伝子量補償として知られるこの現象の体系的な理解にアプローチすべく,(1)遺伝子量補償機構の体系的な解析,ならびに,(2)遺伝子量補償の生物学的役割の解明,を目的として行われている。 今年度の研究では,(1)では,タンパク質分解経路(ユビキチン-プロテアソーム系,オートファジー-リソソーム系),ならびに,合成経路(翻訳)が補償に関与するか否かを検討し,ユビキチン-プロテアソーム系が補償機構であることを示した。また,(2)では,複合体のサブユニットをコードする遺伝子が補償を受けやすいこと,および,遺伝子量補償の影響がサブユニットのみならず複合体の量にまで及ぶこと,を示した。このことから,複合体を構成するサブユニット間の量比の乱れが遺伝子量補償によって補正されることで複合体の量が調整されている可能性が示唆された。これらの結果は,遺伝子量補償の生物学的役割のひとつとして,サブユニット間の量比の維持がある可能性を強く示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子量補償機構の解析では,タンパク質分解経路の活性化による分解量の増加のみならず,翻訳量の減少が補償に関与する可能性についても検討し,ユビキチン-プロテアソーム系の関与を明らかにした。翻訳量の解析では,当初の計画通り,リボソームプロファイリングを用いた。一方,遺伝子量補償の生物学的役割の解析では,遺伝子量補償が複合体サブユニットの量比調整に関与していることを示唆する結果を得た。この結果は当初の予想通りであったが,補償を受けないサブユニットが存在することも同時に判明したため,補償を受ける遺伝子のさらなる特徴付けが必要である。この新たな課題を提示することも含め,以上の成果は論文として発表されており,当初の期待通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ユビキチン-プロテアソーム系を介した遺伝子量補償の全容解明を目指し,補償に至る前段階の解析を重点的に行うことを計画している。また,補償を受けないサブユニット遺伝子も存在することから,補償を受ける遺伝子をさらに特徴付けることも全容解明には重要である。具体的な研究計画としては,①標的タンパク質の分解がN末端のアセチル化によって制御されている可能性の検証,②E3ユビキチンリガーゼの同定,③複合体形成時にサブユニットが組み込まれる順番と遺伝子量補償の関係の解析,を検討している。
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